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慢性腎臓病、運動習慣が将来の要介護回避に有用である可能性-名大ほか

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2025年12月12日 AM09:00

CKDは将来の要介護リスクを高める可能性がある

名古屋大学は11月27日、北名古屋市の行政データを活用したリアルワールドデータ解析を実施し、高齢者における慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)と要介護リスクとの関連を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科 実社会情報健康医療学の大橋勇紀助教、中杤昌弘准教授、同大医学部附属病院先端医療開発部の杉下明隆病院助教、同大学院医学系研究科附属医学教育研究支援センターの加藤佐和子特任准教授、水野正明特任教授(研究当時:同大医学部附属病院先端医療開発部長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Public Health」に掲載されている。


画像はリリースより(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本では、人口構成の高齢化に伴い、医療費のみならず介護費の社会的負担が年々増大している。特に、CKDは進行すると人工透析や腎移植を必要とする末期腎不全となり、1人あたり年間数百万円に及ぶ医療費が発生する。しかし、CKDの影響は透析に限らず、筋力低下やフレイル、日常生活機能の低下などを通じて、要介護状態の発生リスクを高めることも指摘されている。

CKDと要介護リスクの関連、KDIGO分類に基づく報告はほとんどなかった

一般的に、腎機能は血清クレアチニン値から算出される糸球体濾過量によって評価されるが、実際には尿タンパクの有無も腎障害の独立した重要な指標である。国際的には、これら2つの指標を組み合わせた「KDIGO分類」による腎機能評価が標準とされている。しかし、KDIGO分類に基づいたCKDリスクと要介護リスクとの関連を評価した研究は、これまでにほとんど報告されていなかった。

そこで研究グループは、東海介護予防コホート研究(TC-LongCare: Tokai Cohort for the Prevention of Needs for Long-Term Care)として愛知県北名古屋市在住の高齢者(65歳以上)8,428例を対象に、行政の介護認定データと健診情報を統合解析することで、KDIGO分類に基づくCKDリスクと要介護リスクとの関連を解析した。

CKDリスクが高いほど要介護リスクも上昇、運動習慣がある人では低減傾向

その結果、高齢者ではCKDリスクが上昇すると、要介護認定を受ける人の割合が増加することが明らかになった。特に、腎機能低下が深刻であるvery high risk群の5年累積要介護認定イベント発生率は、24.8%(95%信頼区間:17.6-31.4%)と、5年間で4人に1人が要介護状態になりうることが判明した。

また、このCKDによる要介護リスクの上昇は、運動習慣(週2回以上・1回30分以上)がある人では低減する傾向が見られた。

血清クレアチニン値と要介護リスクの関連が「Jカーブ型」であることを発見

今回の研究では、もう一つの成果として、血清クレアチニン値と要介護リスクとの関連はJ字型であることを発見した。クレアチニンは筋肉の代謝で生じる老廃物で、腎臓から尿中に排泄される。したがって、筋肉量が一定であれば血清クレアチニン値の上昇は腎機能低下を反映するが、高齢者では筋肉量の減少により、腎機能が悪化していても血清クレアチニン値が低く見える(腎機能を過大評価してしまう)ことがある。同研究の結果は、血清クレアチニン値が見かけ上低値を示すため、潜在的なCKDが見逃されている高齢者が一定数存在することを示唆している。

こうした見逃しは、CKDに関連する要介護リスクの過小見積もりにつながる可能性があるため、血清クレアチニン値だけでなく尿タンパクやシスタチンC(筋肉量の影響を受けにくい腎機能評価指標)、生活機能を含めた包括的な腎機能評価が必要であると考えられる。このことからも、筋肉量の維持を目的とした日常的な運動習慣が、要介護状態を防ぐセルフケアとして有用であることが裏付けられた。

CKDによる要介護状態の回避策として、運動によるセルフケアに期待

今回の研究では、国内に1400万人以上の患者数がいると推定されているCKD患者の将来的なリスクとして、人工透析を必要とする末期腎不全のみならず要介護状態への悪化にも関連していることを明らかにした。また、この要介護状態への悪化リスクは、運動習慣という個人で改善可能なセルフケアによって低減できる可能性があることを見いだした。

「この発見は、少子高齢化により介護に対する金銭的・人的リソースが限られる現代日本において、より良い政策提言の一助となることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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