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東大 オキシトシン点鼻剤による自閉症スペクトラム障害の対人コミュニケーション能力の改善を実証

読了時間:約 1分23秒
2014年01月01日 AM10:00

ホルモンの一種で脳へ未知の作用

東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の山末英典准教授、同研究科統合生理学分野の渡部喬光特任助教(当時)らは、オキシトシン点鼻剤によって自閉症スペクトラム障害における対人コミュニケーション能力が改善されることを発見した。

(画像はプレスリリースより)

オキシトシンは脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種。子宮平滑筋収縮作用を介した分娩促進や、乳腺の筋繊維を収縮させる作用を介した乳汁分泌促進作用が知られている。しかし、男女を問わず脳内にも多くのオキシトシン受容体が分布しており、脳への未知の作用について関心が持たれていた。健康な大学生を対象にした研究で、他者との信頼関係を築きやすくする効果などが報告されている。

脳活動が上昇し、コミュニケーション能力が改善

研究チームは2012年に、自閉症スペクトラム障害群は健常対照群に比べて言葉の内容よりも表情や顔色を重視して相手の有効性を判断する頻度が有意的に少ないこと、この特徴は内側前頭前野の活動低下が関与していることを突き止めている。

今回の研究は、この行動・脳活動の特徴が、オキシトシンを鼻からスプレーで吸引することによって改善されるかを検証したもの。自閉症スペクトラム障害の成年男子40名を対象に二重盲検などの方法で医師主導臨床試験を行った結果、オキシトシン点鼻剤投与によって低下していた脳活動が有意に上昇し、対人コミュニケーション能力が有意に改善されたという。

今後は、この効果が連日投与を続けた場合にも認められるか、日常生活でも役に立つのかを検証。今回、対象とはならなかった女性や幼少期の子どもについても、オキシトシンの有効性や安全性を検証する必要があるとしている。(小林 周)

▼外部リンク

東京大学医学部付属病院 プレスリリース
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/

Mitigation of sociocommunicational deficits of autism through oxytocin-induced
recovery of medial prefrontal activity: A randomized trial
http://archpsyc.jamanetwork.com/

 

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