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【IASR速報】喘鳴を認める患者急増とEV-D68を検出したAFP症例の報告-感染研ほか

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2022年11月30日 AM10:50

EV-D68に感染し発症した場合さまざまな呼吸器疾患を呈す

国立感染症研究所は11月29日、2022年9月下旬以降、東京都立小児総合医療センターにおいて、気管支喘息様の呼吸器症状での救急外来受診患者が急増したこと、および、エンテロウイルスD68型()が検出された急性弛緩性麻痺(AFP)入院患者の経過報告を公表した。この報告は、東京都立小児総合医療センター感染症科の谷口公啓氏、芝田明和氏、堀越裕歩氏、総合診療科の幡谷浩史氏、榊原裕史氏、集中治療科の齊藤修氏、分子生物研究室の木下和枝氏、検査科の為智之氏、東京都立神経病院神経小児科の星野愛氏、大原智子氏、眞下秀明氏、柏井洋文氏、石山昭彦氏、福田光成氏、熊田聡子氏、脳神経外科の磯尾綾子氏、神経放射線科の中田安浩氏、国立感染症研究所実地疫学研究センターの砂川富正によるものだ。


画像は感染研サイトより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

EV-D68は、エンテロウイルス属のウイルスの一つで、エンテロウイルス属には、ポリオウイルスや、無菌性髄膜炎の原因となるエコーウイルス、手足口病の原因となりうるエンテロウイルス(EV)71型などが含まれる。エンテロウイルス属はさらに分子系統解析によりEnterovirus A~JおよびRhinovirus A〜C(species)に分類され、EV-D68はEnterovirus Dに属する。またEV-D68のウイルス学的性状はエンテロウイルス属に属し、かぜの原因ウイルスとして知られるライノウイルス(Rhinovirus A〜C)に類似している。

EV-D68に感染し発症した場合、発熱や鼻汁、咳といった軽度なものから喘息様発作、呼吸困難等の重度の症状を伴う肺炎を含むさまざまな呼吸器疾患を呈する。なお、弛緩性麻痺を発症した患者の上気道からEV-D68が検出された事例が欧米や日本などから報告されており、弛緩性麻痺患者の一部におけるEV-D68感染との関連が疑われている。

9月以降の入院患者における喘息患者の増加とEV-D68陽性者の増加は同様の傾向

東京都立小児総合医療センターの総合診療科において、2022年9月に入院した患者の中で、主病名が喘息である割合は1日~10日で6.3%(4/63人)、11日~20日で5.8%(5/86人)、21日~30日で16.7%(15/90人)と上昇傾向にあった。

同センターでは、2020年から気道症状の有無にかかわらず緊急入院時に、入院中の患者で新規気道症状出現時に気道検体(鼻咽頭ぬぐい液、または吸引痰)を採取し、ウイルス・細菌核酸多項目同時検出()を用いて21種類の呼吸器病原体を網羅的に検索している。そこで、EV-D68の流行状況を調査するためにHuman Rhinovirus/Enterovirus(FilmArray呼吸器パネル2.1ではHuman RhinovirusとEnterovirusの判別はできず、EV-D68検出時にはこの項目として表示される)が検出された気道検体を対象に、EV-D68特異的プライマーを用いてPCR検査を行った。ただし、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の検体は研究室の安全性の観点から除外した。

2022年9月1日~10月13日までに197検体からHuman Rhinovirus/Enterovirusが検出された。SARS-CoV-2が陽性の21検体を除外した176検体中で25人(14%)からEV-D68が検出された。検体採取日と陽性者数の関係をまとめると、入院患者における喘息患者の増加とEV-D68陽性者の増加は同様の傾向を示した。

EV-D68が検出された25人、年齢中央値4歳、3人が小児集中治療室で治療

EV-D68が検出された25人の年齢は中央値4歳(四分位範囲:3-5)、男児が14人(56%)であった。いずれも入院時の気道検体であり、気道症状は22人(88%)、喘鳴は19人(76%)でみられた。喘鳴をともなう19人に対して全例で気管支拡張薬吸入やステロイド全身投与、酸素投与が行われ、3人(16%)が小児集中治療室に入室となり経鼻ハイフロー酸素療法が行われた。気管支喘息発作の治療を受けた19人のうち、過去に気管支喘息の指摘がなかったものは9人(47%)であり、年齢の中央値3歳(四分位範囲:3-5)、男児が7人であった。後述のAFP症例を除き、EV-D68が検出された25例中、AFPや脳神経異常を呈した症例はなかった。

なお、今回の検討ではFilmArray呼吸器パネル2.1によりEV-D68を検出しており、ウイルスの塩基配列の変異が生じていた場合は検出できていない可能性がある。同研究は、同センターの公衆衛生上の公表の重要性による緊急倫理承認を得た。

AFP症例は6歳女児、発症22日後時点で左上肢の弛緩性麻痺と右三角筋の筋力低下の残存

AFP症例は、早産・超低出生体重児の周産期歴がある6歳女児であった。2022年9月中旬より咳嗽、微熱が出現し、発症2日後から後頸部の痛みと左手の筋力低下が出現した。発症3日後に39℃の発熱、発症4日後の朝から左上肢の弛緩性麻痺を認めた。都立小児総合医療センターの救急外来を受診し、髄液検査では髄液細胞数の増多を認め(380/3mm3)、満床のため東京都立神経病院に入院となった。造影頚椎MRI検査では第5〜第7頚髄を中心にT2強調像で高信号を認め、軽度の脊髄浮腫と判断した。MRI検査の水平断では左優位に灰白質に信号異常が分布し、症状と一致する所見と判断した。AFPと診断しγグロブリン療法を実施した。入院時に採取した鼻咽頭ぬぐい液のPCR検査でEV-D68が検出されたが、髄液、血液、便検体からEVは検出されなかった。発症22日後時点で左上肢の弛緩性麻痺と右三角筋の筋力低下の残存を認めている。保護者より症例の報告の同意は得た。

EV-D68感染症の流行に注意を

今回の調査で25人の入院患者でEV-D68が検出され、EV-D68陽性例の多くに気管支喘息様症状を認め、AFPも1例みられた。同研究所は、同様の症状を呈する患者が今後も発生する可能性があり、EV-D68感染症の流行に注意する必要があると、注意喚起している。

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