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LPA-DHA低下がうつ病の病態により強く関与している可能性-熊本大ほか

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2021年09月06日 AM11:30

モノアミン神経系標的のうつ病治療薬は全ての症例に有効な治療薬ではない

熊本大学は9月3日、うつ病患者のリゾリン脂質代謝異常について研究を行い、うつ病患者および統合失調症患者の脳脊髄液中で、)の一種「-ドコサヘキサエン酸(-DHA)」が特異的に低下し、いくつかのうつ病症状と相関していることを見出したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究部神経精神医学講座の竹林実教授、国立病院機構呉医療センター臨床研究部の大盛航医師(現:広島大学)らの研究グループと、東京大学薬学部、国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部との共同研究によるもの。研究成果は、「International Journal of Neuropsychopharmacology」に掲載されている。


画像はリリースより

これまで、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳の神経伝達物質(モノアミン神経系)を標的としたうつ病治療薬の開発が進められてきた。しかし、難治例が40%近く存在するなど、全ての症例に有効な治療薬ではなく、うつ病の病態についても不明な点が多いことから、新しい分子標的による病態の理解や創薬が求められている。

/統合失調症患者髄液における各種LPA分子種を測定

通常、リン脂質は2本の脂肪酸を持つが、生体内には脂肪酸を1本しか持たないリン脂質が存在し、リゾリン脂質と呼ばれる。リゾリン脂質にはその構造の違いからさまざまな種類がある。そのうち、リゾフォスファチジン酸(LPA)は、脳において神経発達、炎症、神経・血管新生など多様な機能を有するリゾリン脂質である。さらに、脂肪酸の種類や結合部位の違いにより、LPAにも多数の分子種が存在し、異なる機能を持つことが推測されている。

一方、青魚に多く含まれているオメガ3系脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)は脳に多く含まれる必須脂肪酸であり、認知や情動などの高次脳機能を増強および安定化することが知られている。また、脳には、DHAを含むLPAが多く存在していることも知られている。

これまでに研究グループは、抗うつ薬が直接作用する新しい標的分子としてLPA1受容体を見出し、うつ病患者の脳脊髄液中のLPAを合成する酵素の働きが低下していることを見出していた。しかし、LPAは多様な分子種が存在するため、具体的にどの分子種のLPAが低下しているかは不明のままだった。そこで今回の研究では、液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS/MS)を用いて、うつ病および統合失調症患者の脳脊髄液中に存在する多種類のLPA分子種を解析した。

LPA-DHAが特異的に低下、うつ病の重症度と有意に相関

その結果、うつ病および統合失調症患者において、分子構造中にドコサヘキサエン酸(DHA)を有するLPA22:6(LPA-DHA)のみが特異的かつ有意に、健常者と比較して低下していることを見出した。さらに、その低下は、統合失調症の重症度(症状スケールスコア)とは相関しなかったが、いくつかのうつ病の重症度とは有意に相関したことから、LPA-DHA低下がうつ病の病態により強く関与していることが示唆された。

LPA-DHAの合成やLPA受容体を標的とした治療薬の開発に期待

今後さらに症例数を増やして確認する必要があるものの、今回の結果から、LPA-DHA合成やLPA受容体を標的とした新しいうつ病治療薬の開発につながることが期待されるという。「また、オメガ3系脂肪酸であるDHAは精神疾患での低下が多く報告されていることから、薬だけに頼らない栄養療法として、LPA-DHA経路による新しい治療法の開発も期待される」と、研究グループは述べている。

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