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老化細胞を詳細に解析できるマウスを作製、肝・腎から除去でNASH改善-東大医科研

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2020年09月25日 PM12:45

個体老化に大きく関与の「」の詳細は大きな謎だった

東京大学医科学研究所は9月18日、老化細胞のマーカー遺伝子であるp16遺伝子に着目し、世界で初めて、一細胞レベルで老化細胞を検出・解析可能なマウスを作製したと発表した。この研究は、同研究所所癌防御シグナル分野の大森徳貴大学院生(博士課程1年)、王德瑋大学院生(博士課程3年)、城村由和助教、中西真教授、先進病態モデル研究分野の山田泰広教授、臨床ゲノム腫瘍学分野の古川洋一教授、健康医療インテリジェンス分野の井元清哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cell Metabolism」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

これまでの研究から、老化細胞は個体老化に大きく関わっていることが示唆されていた。しかし加齢個体のどこに老化細胞が存在するのか、その起源はどのような細胞か、それらの細胞内動態や性質はどうなっているのかなどへの問いはほとんど解明されておらず、大きな謎となっていた。

老化細胞マーカーp16を1細胞レベルで標識可能なマウスの作製に成功

今回、研究グループは、世界で初めて老化細胞を1細胞レベルで標識可能なマウスの作製に成功した。このマウスは、老化細胞のマーカー遺伝子であるp16遺伝子プロモーターの下流にCreERT2リコンビナーゼ遺伝子を挿入したp16-CreERT2マウスと、CreERT2リコンビナーゼ活性依存的に赤色の蛍光タンパク質であるtdTomatoを発現するRosa26-CAG-lsl-tdTomatoマウスを交配し、タモキシフェン(TAM)依存的に老化細胞を赤色蛍光で標識することで、1細胞レベルの検出・単離が可能となったものだ。

老化細胞は体内のさまざまな臓器に存在、増殖せずに数か月で個体から除去

中年期に入ったマウスにTAMを投与し、老化細胞を標識したところ、腎臓・肺・肝臓・心臓・脳・小腸・大腸といった解析した全ての臓器において老化細胞が検出された。また、老化細胞が加齢に伴って、どのように変化するか調べたところ、個々の老化細胞は増殖していないものの、全ての臓器において、その数が加齢に伴い顕著に増加することがわかった。老化細胞の生体内における半減期を調べたところ、臓器により違いがあるものの約2~4か月程度であることが明らかになった。

次に、TAM処理したマウスの肝臓と腎臓から老化細胞を単離して、シングルセルRNA-seq解析を行ったところ、ほとんど全ての種類の細胞集団に頻度の違いはあるものの、老化細胞が存在していることが判明。肝臓においては、老化細胞は肝類洞壁内皮細胞(LSECs)において多く同定され、また一部クッパー(Kupffer)細胞にも認められた。

肝臓・腎臓から老化細胞を除去すると、NASHが顕著に改善

興味深いことに、クッパー細胞において老化細胞が多く存在する画分はクッパー細胞とLSECsの両方の性質を持った新たな細胞集団(クッパー様EC細胞)であることもわかった。NASHを誘導した肝臓ではLSECs画分やクッパー画分の老化細胞が顕著に増加し、とりわけ老化クッパー細胞においてサイトカインシグナルの増強や、細胞接着性の促進などが見られた。腎臓においても老化細胞はほとんど全ての種類の細胞集団に認められたが、近位尿細管、あるいは遠位尿細管上皮細胞に多く認められた。これらの老化細胞は細胞の種類に依存して性質が多様だったが、多くは加齢性変化とよく相関するものだった。

最後に老化細胞の標識と除去を目的として、p16-CreERT2マウスとCreERT2リコンビナーゼ活性依存的にジフテリア毒素受容体(DTR)を発現するRosa26-CAG-lsl-DTR-tdTomatoマウスを交配し、ジフテリア毒素(DT)依存的にtdTomato赤色蛍光標識された老化細胞を除去可能なマウスを樹立。これまでNASH肝臓の脂肪化や炎症細胞浸潤に老化細胞が関わっていることが示唆されていたが、実際にNASH肝臓からDT投与により老化細胞を除去すると、脂肪化や炎症が改善することが明らかとなった。

ヒトの老化原因のさらなる解明や、抗加齢療法の開発に期待

今回の研究成果により、生体内の老化細胞は、起源となる細胞種類や刺激により多様であることが示された。個体の加齢現象は多様性に富んでいることがよく知られており、このことは臓器・組織における老化細胞の多様性や、蓄積率の違いにより説明できる可能性がある。今後さらに詳細に解析することで、各臓器・細胞における老化の原因や機能低下を制御する分子基盤が明らかになることが期待される。

また、老化細胞を除去する新たな技術の開発を通じて革新的な抗加齢療法や、老年病の予防・治療薬の開発にもつながることが期待される。加えて、老化細胞の蓄積は加齢に伴うがん発症を促進することが予想されており、今回の研究で作成したマウスは、なぜ加齢に伴ってがんになりやすくなるのかを解明する強力なツールとなり得る。

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