医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 全身性強皮症、転写因子FLI1のマイクロサテライト多型が発症に関連-筑波大ほか

全身性強皮症、転写因子FLI1のマイクロサテライト多型が発症に関連-筑波大ほか

読了時間:約 3分26秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年07月30日 PM12:00

FLI1の多型とSScの関連はGWASで未検出、GAリピート多型は?

筑波大学は7月28日、転写因子FLI1遺伝子内に位置するマイクロサテライト多型(GAリピート多型)が全身性強皮症の疾患感受性に関連することを、初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大人間総合科学研究科の山下計太・生命システム医学専攻生(浜松医科大学医学部附属病院検査部臨床検査技師長)、医学医療系の川﨑綾助教、土屋尚之教授らの研究グループが、国内の多施設共同研究として行ったもの。研究成果は、「Rheumatology」に掲載されている。


画像はリリースより

(systemic sclerosis, SSc)は代表的な膠原病の1つで、皮膚および臓器の線維化、血管障害、自己抗体産生を特徴とする。原因は未解明だが、複数の遺伝因子と後天的因子の複合により発症に至る多因子疾患と考えられている。複数のゲノムワイド関連研究を含めた疾患関連遺伝子解析により、HLA遺伝子をはじめとする数十の座位の関連が報告されてきたが、他の免疫疾患と共通するものが多くを占め、膠原病の中でも特徴的な強皮症の病態を説明し得る遺伝因子は見出されていなかった。

一方、東京大学大学院医学系研究科皮膚科学教室などによる近年の一連の研究により、血球系細胞、血管内皮細胞、皮膚線維芽細胞などに強く発現し、抗線維化作用を有する転写因子Fli1(Friend leukemia integration 1)の発現低下が、モデルマウスに強皮症様の病態(線維化や血管障害、自己抗体産生など)を誘導することが明らかになった。さらに、強皮症患者においても、皮膚におけるFLI1発現低下が認められることが示され、疾患感受性候補遺伝子としても注目されてきた。しかし、これまでのゲノムワイド関連研究では、FLI1遺伝子の多型と全身性強皮症の関連は検出されていなかった。

FLI1遺伝子には、遺伝子発現を制御する領域に、GAという2塩基の繰り返しの回数が個人によって異なるマイクロサテライト多型(GAリピート多型)が存在し、Tリンパ球におけるFLI1 mRNA発現と関連すると報告されていた。 マイクロサテライト多型は、ゲノムワイド関連研究等に用いられる解析系では解析が困難なことから、これまで全身性強皮症との関連は報告されてこなかった。今回、研究グループは、このFLI1遺伝子のGAリピート多型と全身性強皮症の疾患感受性との関連を解析した。

GAリピート延長を伴うアリルが、SSc疾患感受性とFLI1 mRNA発現低下に関連

探索研究群(discovery stage)、確認研究群(replication stage)あわせて639人の全身性強皮症患者と851人の健常対照者のゲノムDNAを対象に、GAリピート多型の遺伝型を決定した。その結果、リピート数は11回から31回までに分布していた。患者群においては、リピート数が多い方向に有意に偏っていた。続いて、ROC(Receiver Operating Characteristic)解析に基づき、 リピート数22以上をL(long)、21以下をS(short)アリルとして、強皮症群と対照群の遺伝型を解析。探索研究群と確認研究群をメタアナリシスした結果、Lアリルが強皮症群で有意に増加していた(P=5.0×10-4、オッズ比1.34、95%信頼区間1.14-1.58)。この関連は、強皮症のサブセット(びまん皮膚硬化型、限局皮膚硬化型)にかかわらず検出されたが、皮膚硬化の強い群では弱い群よりも強い関連が見られた。

次に、GAリピート数と末梢血におけるFLI1 mRNA発現との関連を検討。その結果、強皮症全体では、健常対照群全体と比較して、 mRNAの発現に減少傾向が見られた。強皮症群と健常対照群をそれぞれGAリピート数別に分けて比較すると、健常対照群では、Lアリル保有者のFLI1 mRNAが非保有者と比較して有意に低下していた。一方で、患者群ではLアリルの保有の有無にかかわらず、Lアリルを持たない健常者群と比較してFLI1 mRNAの有意な低下が認められた。

遺伝的に規定されたFLI1発現低下がヒトのSSc発症に関連の可能性、治療標的にも

マウスモデルにおいてはFli1の遺伝子欠失による発現低下で強皮症に特徴的な臨床所見が報告されていたが、今回の研究により、ヒトにおいても、遺伝的に規定されたFLI1発現低下が強皮症発症に関連する可能性が示された。ヒトの全身性強皮症におけるFLI1発現低下は、エピゲノム修飾を介するものと報告されていたが、今回の研究成果から、ゲノムDNA多型もFLI1発現低下の原因となり得ることが示された。GAリピートに近接して、DNAメチル化を受けるCpGアイランドが位置することから、GAリピート延長がエピゲノム修飾の一因となる可能性も考えられる。さらに、患者群ではLアリルの有無に関わらずFLI1 mRNA 低下傾向が見られたことから、このGAリピート多型以外にもFLI1の発現低下をきたす分子機構があることが示唆される。

マイクロサテライト多型は、強い連鎖不平衡にある一塩基バリアント(SNV)がない場合、ゲノムワイド関連研究では捕捉しがたいため、missing heritability問題(ある疾患において想定される遺伝因子の一部しか見つかっていない問題)の一因となっている可能性がある。研究グループは今回の知見について、「ヒトの全身性強皮症の治療標的としてのFLI1の重要性を更に支持するとともに、今後の多因子疾患の遺伝因子解明における、SNV以外のバリアントを探索する重要性をも示唆している」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • パーキンソン病の原因「αシヌクレイン」のアミロイド線維形成過程を一部解明-金沢大ほか
  • モガムリズマブ抵抗性のATLリンパ節病変にブロモドメイン阻害剤が有用な可能性-名大
  • 40歳以上の夫婦は同じ生活習慣病にかかりやすいと判明-筑波大
  • 高齢者における社会からの離脱には段階があることが明らかに-都長寿研
  • 日本人の関節リウマチ合併の間質性肺炎に関わる遺伝子領域をGWASで同定-阪大ほか