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生体バリア「タイトジャンクション」の新たな仕組みを解明-生理研

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2019年09月11日 PM12:15

タイトジャンクション内の膜タンパク質の役割を明らかに

生理学研究所は8月29日、タイトジャンクションにおいて、クローディンがイオンのような小さな物質も通さない強固なバリアを形成するのに対し、新たに「」と呼ばれる分子がタンパク質などの大きな物質に対するバリアの形成に重要であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所の古瀬幹夫教授と大谷哲久助教の研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Cell Biology」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトの体の表面は細胞のシートによって覆われていて、体の内部を外環境から保護するバリアとして働いている。生体のバリアは恒常性の維持に不可欠であり、その破綻はアトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患などさまざまな疾患の発症に寄与すると考えられている。

生体のバリアを作るためには、体の表面を覆う細胞同士の隙間を塞ぐことにより、さまざまな物質が漏れるのを防ぐ必要がある。タイトジャンクションはこのようなバリアを作るのに重要な接着装置であり、隣り合う細胞を密着させることにより細胞同士の隙間から物質が漏れるのを防いでいる。これまでの研究から、タイトジャンクションにはクローディンという膜タンパク質が存在し、バリアを作るためにとても重要であることが知られている。一方、タイトジャンクションにはクローディン以外にも「JAM-A」などいくつかの膜タンパク質が存在するが、それらが生体バリアの形成にどのような役割を果たしているかは明らかではなかった。

クローディンが小さな物質、JAM-Aが大きな物質に対するバリアを形成

今回、研究グループは、まず生体バリアの形成におけるクローディンの役割を検証するために、ゲノム編集技術を用いてクローディンを欠失する細胞を作成した。その結果、クローディン欠失細胞では、イオンなどの小さな物質に対するバリアが壊れていた。ところが電子顕微鏡で観察すると、予想に反して細胞同士がまだ密着しており、タンパク質などの大きな物質に対するバリアは残存していることがわかった。このことから、大きな物質に対するバリアの形成には、クローディン以外の別の分子も関与すると考えられた。そこで、研究グループはバリアの形成に何らかの役割を果たすと考えられていたJAM-Aに注目。ゲノム編集により、クローディン欠失細胞からさらにJAM-Aを取り除いたような細胞を作成したところ、この細胞においては細胞と細胞の間に隙間ができ、大きな物質に対するバリアも壊れることが明らかになった。これらの結果から、JAM-Aが大きな物質に対するバリアの形成に重要であることがわかった。

これまで、タイトジャンクションの作るバリアはクローディンによって担われると考えられてきた。今回の発見により、タイトジャンクションはクローディンによるイオンのような小さな物質も通さない強固なバリアとJAM-Aによるタンパク質などの大きな物質を通さない比較的緩いバリアという2つの異なるバリアの組み合わせによって構成されていることが明らかになった。これらの結果は、タイトジャンクションがどのように成り立っているのかについての教科書的な理解に修正を迫るものだという。研究グループは、「今後、このバリアが実際に体のどのような器官ではたらいているのか、病態とどのように関係するか調べていきたい」と、述べている。

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