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止血ナノ粒子と酸素運搬ナノ粒子による重度出血性ショックの救命蘇生、世界初−防衛医大ら

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2019年07月04日 PM01:15

バランスのよい血液の輸血が救命効果をあげる

防衛医科大学校は7月2日、止血ナノ粒子と酸素運搬ナノ粒子を用いた出血性ショックの救命蘇生に世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大免疫微生物学講座の木下学准教授と早稲田大学理工学術院の武岡真司教授、奈良県立医科大学化学講座の酒井宏水教授の研究チームによるもの。研究成果は「Transfusion」に掲載されている。


画像はリリースより

交通事故などによる外傷性大量出血では、迅速な大量輸血が救命のポイントとなる。海外では、酸素運搬能を持つ赤血球と止血能を持つ血小板、そして循環ボリュームを保つ血漿、すなわち血液の各成分をバランスよく輸血することが救命効果をあげると注目されている。しかしながら、血小板は保存の難しさと保存期間の短さから緊急時に大量輸血することは至難。赤血球も地域や状況によっては決して十分な輸血量を確保できるとは言い難く、このような状況は少子高齢化によって時代と共に深刻さが増してくると考えられる。

血小板輸血と赤血球輸血の群と同程度の救命効果

同研究チームは、早大が中心となり、出血部位に集まり血小板血栓の形成を促進させるナノ粒子(血小板代替物)を開発し、その止血能を研究してきた。奈良県立医大では、ヒトヘモグロビンを内包し、赤血球とほぼ同等の酸素運搬能を有するナノ粒子(赤血球代替物)も開発してきた。両者とも直径は200~250nm。研究チームは、この血小板代替物と赤血球代替物を用いて、緊急時の重篤な出血性ショックの患者さんを救命できないか、ウサギを用いて試みた。

急性の血小板減少病態を誘導し、出血が止まらなくなったウサギの肝臓を傷つけ出血させた後、まず出血部位を5分間圧迫しながら血小板代替物を血漿と共に静脈内投与。その後、圧迫を解除して止血の有無を確認、さらに出血による極度の貧血に対して赤血球代替物を投与して救命効果をみた。その結果、10匹中6匹を救命でき、血小板輸血と赤血球輸血の群(10匹中7匹救命)と同程度の救命効果が認められた。

交通事故などの多発外傷では、大量出血で死に至る事態が度々発生し、迅速かつ効果的な輸血が救命には必須となる。これらの止血能と酸素運搬能を有する血小板や赤血球の代替物は共に保存性に優れ、病院内のみならず外傷性出血患者の病院前蘇生などにも有用性が期待されると、研究チームは述べている。

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