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臓器透明化手法で腎臓全体の交感神経系の3次元構造を可視化、その機能障害を解析—東大病院ら

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2019年04月12日 PM01:15

臓器透明化と3次元免疫染色を組み合わせて

東京大学医学部附属病院は4月9日、臓器透明化手法「」を用いてマウスの腎臓を透明化し、3次元免疫染色を組み合わせることで腎臓全体の交感神経の構造を把握することに成功したと発表した。この研究は、東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科の長谷川頌医師、南学正臣教授らと、同大学院医学系研究科システムズ薬理学の洲﨑悦生講師、上田泰己教授ら、理化学研究所と、東海大学の共同研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Kidney International」に同日付でオンライン掲載された。


画像はリリースより

腎臓は血液をろ過して尿を生成することで老廃物を排出し、体内の環境を一定に保つ働きをしている。この腎臓の複雑な動きを制御するために交感神経系が重要な働きを担っていると考えられてきたが、これまで腎臓における神経系の3次元構造を把握することは困難だった。

臓器全体での3次元構造を把握する手段としてCTやMRIがあるが、特定の機能を持った細胞を標識して観察することはできない。一方、顕微鏡を用いた従来の病理組織学的解析では、臓器を薄い切片に切ってスライドガラスに載せて特定の細胞を標識することはできるが、臓器全体の構造を3次元で把握することはできない。

世界初、腎臓の交感神経が走行する様子を可視化

今回、研究グループが開発した臓器透明化手法「CUBIC」を用いてマウスの腎臓を透明化することに成功。そこで、3次元免疫染色によって交感神経に特異的なマーカーであるチロシン水酸化酵素を標識し、高速3次元撮影が可能であるライトシート顕微鏡を用いて腎臓全体の観察を行った。

その結果、交感神経は動脈の周囲を取り巻くように走行していることが明らかとなり)、交感神経が動脈の収縮を制御していることが裏付けられた。また、腎臓の虚血再かん流障害を起こしてから10日後の腎臓を透明化して観察したところ、交感神経マーカーで標識される領域が健康な腎臓と比べて著明に減少していた。また、交感神経から分泌される神経伝達物質であるノルアドレナリンの量を測定したところ、虚血再かん流障害10日後の時点の腎組織内では著明に低下していたことから、交感神経の機能異常が生じていることが裏付けられた。

今後の腎臓病研究における強力なツールに

次に、経時的な変化を観察したところ、交感神経マーカーで標識される領域は障害直後に最も減少し、時間と共に徐々に回復するものの、28日後でも完全には回復しておらず、交感神経の機能異常が長期間にわたって遷延していることが分かった。急性腎障害が生じた後、徐々に線維化を中心とする慢性腎臓病に移行していくことが知られているが、今回見出した遷延する腎交感神経の機能異常が病態に影響している可能性もあり、今後の研究につながる成果だという。

さらに研究チームは、・動脈だけでなく、腎臓の他構造(集合管・近位尿細管・糸球体)を、それぞれ3次元免疫染色を用いて標識することによって臓器全体で可視化することにも成功した。この臓器透明化(CUBIC)と3次元免疫染色を組み合わせた観察法は、今までにない包括的な視点を提供することで、今後の腎臓病研究において強力なツールとなることが期待されると研究グループは述べている。

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