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世界初、ヒトiPS細胞から作製した角膜上皮細胞シート移植の臨床研究が承認-阪大

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2019年03月11日 PM12:30

拒絶反応やドナー不足の問題を解決するために

大阪大学は3月5日、ヒトの人工多能性幹細胞()から角膜上皮細胞シートを作製し、角膜疾患患者に移植して再生する臨床研究計画(第一種再生医療等提供計画)を2019年1月16日に厚生労働省に提出し、2019年3月5日に開催された厚生科学審議会再生医療等評価部会での審議で承認を得られたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)らの研究グループによるもの。


画像はリリースより

角膜上皮の幹細胞が消失して角膜が結膜に被覆される角膜上皮幹細胞疲弊症では、角膜混濁のため重篤な視力障害が引き起こされる。これに対する治療として、ドナー角膜を用いた角膜移植が実施されてきたが、同疾患では拒絶反応が高率に生じるため、成績は不良となっている。加えて、ドナー角膜は日本を含めて世界的に圧倒的に不足している。

こうした課題を抜本的に解決するために、研究グループはヒトiPS細胞を用いた角膜上皮再生治療法の開発を進めてきた。これまでに研究グループは、ヒトiPS細胞から角膜上皮前駆細胞を誘導・単離する革新的な方法と、移植可能なヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞シートを作製する技術を世界で初めて確立。ヒトiPS細胞から、同心円状の4つの帯状構造からなる2次元組織体(Self-formed Ectodermal Autonomous Multi-zone:)が誘導される培養系を開発した。SEAMの各領域には角膜上皮を含む眼の構成細胞(網膜、水晶体等)が規則正しい配向で誘導されているが、研究グループはこのSEAMの3層目に誘導される角膜上皮前駆細胞を単離し、高純度かつ機能的な角膜上皮組織を作製する製造プロトコールの確立に成功した。さらに、動物モデルへの移植により、ヒトiPS細胞由来角膜上皮組織の治療効果と安全性を立証するとともに、種々の試験によりiPS細胞由来角膜上皮組織は造腫瘍性を認めないことなど、安全性を証明してきた。

他家iPS細胞由来角膜上皮細胞シートを移植

今回の研究では、重症の角膜上皮幹細胞疲弊症患者に対し、京都大学iPS細胞研究所から提供された他家iPS細胞由来の角膜上皮細胞シート移植を行う。予定症例数は4例で、最初の2例においてiPS細胞シートとHLA型が不適合の患者に対して、免疫抑制剤を用いた移植を行う。1、2例目の中間評価を行い、続く2例におけるHLAの適合、不適合および免疫抑制剤の使用の有無を決定する。研究の経過観察期間は1年で、終了後1年間の追跡調査を行うという。主要評価項目は安全性であり、研究中に生じた有害事象を収集し評価する。加えて、副次評価項目として、角膜上皮幹細胞疲弊症の改善の程度や視力などの有効性を評価する。

研究グループは、この研究においてヒトiPS細胞由来の他家角膜上皮細胞シート移植のFirst-in-Human臨床研究を世界で初めて実施し、その後、治験につなげて標準医療に発展させることを目指している。今回の手法は、既存治療法における問題点、特にドナー不足や拒絶反応などの課題を克服できることが革新的治療法となり得るもので、世界中で角膜疾患のため失明状態にある多くの患者の視力回復に貢献できると考えると研究グループは述べている。

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