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脂肪細胞でPGD2合成酵素「L-PGDS」を抑制すると体重増加が抑えられることを発見−東大病院ら

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2019年02月18日 AM11:45

肥満調節分子を探し抗肥満薬開発を目指す

東京大学医学部附属病院は2月13日、「 (PGD2)」を合成するL型酵素()を脂肪細胞で作れないようにしたマウスでは、食事による体重増加が抑制され、インスリン感受性が改善されたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院眼科の裏出良博特任研究員(北里大学薬学部客員教授)、同大大学院農学生命科学研究科放射線動物科学研究室の永田奈々恵特任研究員、大阪薬科大学薬学部病態生化学研究室の藤森功教授および前原都有子助教、第一薬科大学薬学部薬品作用学分野の有竹孝介教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」(オンライン版)に2月13日付で掲載された。


画像はリリースより

肥満は、多くの生活習慣病の発症原因となることから、肥満の予防や解消は急務の課題とされている。肥満は複雑に制御されていることから、肥満のメカニズムを解明し、新たな抗肥満薬の開発につながる「肥満調節分子」の発見が期待されている。肥満では、組織に脂質が蓄積するだけでなく、脂質自体が直接、肥満や生活習慣病の病態の進展に関わることが知られているが、その制御機構の全貌は解明されていなかった。

脂肪細胞でL-PGDSの働きを抑えたら体重増加が20%減少

研究グループはこれまでに、脂肪細胞に蓄積した脂肪の分解をPGD2が抑制することを発見していた。さらに、PGD2を生合成するL-PGDSの遺伝子発現が肥満マウスの脂肪組織において上昇することを発見した。そこで今回、肥満制御におけるL-PGDSとPGD2の働きを調べるために、脂肪細胞で特異的にL-PGDSを作れないようにしたマウスを作製して解析した。まず、正常なマウスと脂肪細胞でL-PGDSを作ることができないマウスに11週間、普通食あるいは高脂肪食を与えた。結果、高脂肪食を与えた場合、脂肪細胞でL-PGDSを作れないマウスでは、正常なマウスと比べて体重増加が20%以上減少していた。また、内臓や皮下の脂肪量も減少し、個々の脂肪細胞の大きさも小さくなっていた。一方、普通食では両者に肥満の程度や脂肪細胞の大きさに差は現れなかった。

次に、脂肪細胞の分化の程度を知るさまざまなマーカー遺伝子や脂肪酸の生合成に関わる多くの遺伝子の発現を調べた結果、脂肪細胞でL-PGDSを作れないマウスで、いずれも低下していると判明。また、メタボリックシンドロームで異常となる血液中のコレステロール、脂質、グルコースの値も、正常マウスと比べて、脂肪細胞でL-PGDSを作れないマウスでは低下(改善)していた。さらに、脂肪細胞でL-PGDSを作れないマウスでは、炎症を誘導するマクロファージのマーカー遺伝子であるF4/80やCD11cの発現レベルが低下しており、糖尿病の指標となるインスリン感受性も改善されていることが明らかとなった。以上の結果より、L-PGDSの働きを抑える薬剤は、肥満の新しい予防法や治療法の開発につながることが期待されると研究グループは述べている。

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