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大腸がんの新規発症メカニズムを解明−東大

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2018年11月26日 PM03:00

がん化するために重要なシグナル伝達経路を同定

東京大学は11月20日、大腸がんのもととなる新たな細胞を発見し、その細胞ががん化するために重要なシグナル伝達経路を同定したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院消化器内科の早河翼助教、坪井真代医師、小池和彦教授らの研究グループが、米コロンビア大学と共同で行ったもの。研究成果は「Gastroenterology」に掲載されている。

大腸がんは、大腸の中にある少数の幹細胞に特定の遺伝子異常が蓄積することで発生するものと考えられていたが、これまでの報告で、幹細胞ではないいくつかの分化細胞や前駆細胞と呼ばれる細胞群が炎症などの刺激を受けることで、幹細胞のような働きを持つように変化することがわかってきている。このように、幹細胞以外の細胞が幹細胞化した後に、実際の幹細胞と同じようにがんのもとになるのかということは判明しておらず、仮にがん化する場合でも、どのようなメカニズムでがんに変化していくかについて、明らかにされていなかった。

BHLHA15陽性内分泌系前駆細胞をがんのもとに特定

研究グループは、BHLHA15という遺伝子を発現する特定の内分泌系前駆細胞を発見し、この細胞が幹細胞と同じようにがんの起源となりうること、またその過程で、Notch経路とYAP経路ががん細胞化に重要であることを明らかにした。

さらにマウスモデルを用いて、BHLHA15を発現する細胞の動態を詳細に観察。その結果、この細胞が粘液を分泌する杯細胞や病原体を防御するパネート細胞といった内分泌系細胞と呼ばれる特定の細胞集団を産生する内分泌系前駆細胞であることを明らかにした。通常BHLHA15陽性内分泌系前駆細胞は2週間程度しか生存せず、幹細胞から生み出される新しい細胞に置き換わってしまう。しかし、ドキソルビシンという抗がん剤の一種で粘膜障害を引き起こすと、この細胞の中でNotch経路が活性化され、それにより、長期にわたって細胞分裂を繰り返す幹細胞のような働きを持つようになることが判明した。

さらに、より詳細な遺伝子解析の結果から、Notch経路が活性化することで、BHLHA15陽性内分泌系前駆細胞がまず別の前駆細胞である吸収系前駆細胞へと変化し、この状態で大腸がん発生に重要なApc遺伝子の変異を生じさせることで、BHLHA15陽性内分泌系前駆細胞が大腸・小腸でがんのもととなることがわかった。その一方、潰瘍性大腸炎の患者でみられるような大腸炎症発がんの発生モデルにおいては、この細胞の中のYAP経路が活性化し、それによってがん化することを明らかにした。

今回の研究成果は、BHLHA15陽性内分泌系前駆細胞は放射線や抗がん剤に耐性であることから、がんの治療抵抗性や再発といった長年の疑問を解く鍵になりうるもの。また、Notch経路が活性化した時にできる腫瘍は鋸歯状病変とよばれる特定のヒト大腸がんに類似しており、このタイプの大腸がんでは内分泌系前駆細胞の幹細胞化やNotch経路の活性化が起きている可能性が考えられるという。研究グループは「今回同定されたBHLHA15陽性内分泌系前駆細胞や、この細胞を幹細胞化させるNotch・YAP経路を標的とする薬剤を開発・発見することで、新たな大腸がん治療の展開に結び付く可能性がある。またこのような発がんメカニズムは、ほかのさまざまながんでも存在する可能性があり、今後の研究の発展が期待される」と述べている。

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