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てんかん治療薬カルバマゼピン、遺伝子型検査の臨床的有用性を実証-理研

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2018年04月05日 PM01:45

薬疹による副作用発症率が3.7~13%のカルバマゼピン

理化学研究所は4月3日、てんかん治療薬「」の使用における遺伝子型検査の有用性に関する臨床介入研究を行い、「」を用いた薬理遺伝学検査の臨床的有用性を実証したと発表した。この研究は、同生命医科学研究センターの莚田泰誠チームリーダーを中心とする共同研究グループが、国内18医療機関、36病院と共同で行ったもの。研究成果は「JAMA Neurology」オンライン版に掲載されている。

カルバマゼピンは、てんかん治療の第一選択薬として世界中で使われている。しかしこの薬は、薬によって起こる皮膚や眼、口などの粘膜に現れる発疹である薬疹による副作用発症率が3.7~13%と非常に高く、医療上、大きな問題となっていた。2011年、理研はHLA-A*31:01遺伝子型が、日本人におけるカルバマゼピンによる薬疹の発症に大きく関与していることを明らかにしており、2012年、カルバマゼピンの投与が必要とされた患者を対象とした前向き臨床研究「Genotype-Based Carbamazepine Therapy(GENCAT)study」を開始した。

薬疹の発症率が41~61%減少

この研究では、カルバマゼピンを投与予定の日本人患者1,130名全員に、カルバマゼピンを投与する前にHLA-A*31:01遺伝子型検査を行い、遺伝子型陰性者にはカルバマゼピンを、陽性者には代替薬をそれぞれ投与。その後8週間、カルバマゼピンによる薬疹が発症するかどうかを追跡した。


画像はリリースより

2012年1月~2014年11月までの間、日本人患者1,130名のうち、198名(17.5%)がHLA-A*31:01遺伝子型検査が陽性だった。8週間の追跡期間中にカルバマゼピンによる薬疹の発症を23例(2.0%)に認めたという。このうち4例で入院での治療が必要となったが、重篤な副作用であるSJS-TENは1例も発症しなかたという(バイオバンク・ジャパンにおけるSJS-TENの発症は1,312名中3例)。

この薬疹発症率をバイオバンク・ジャパンの薬疹発症率(3.4%)と比べたところ、薬疹発症率が59%へと有意に低下していることが示された(P値=0.048)。さらに、株式会社日本医療データセンターが有する健康保険組合レセプトデータ(JMDC Claims Database)における薬疹発症率(5.1%)と比較したところ、同様に薬疹発症率が39%へと有意に低下していることが示されたという(P値<0.0001)。カルバマゼピンによる薬疹の発症率が41~61%減少することがわかったとしている。

今回の研究結果より、カルバマゼピンを投与する前にHLA-A*31:01遺伝子型検査を行い、その結果に基づいてカルバマゼピンを投与するかどうかを決定することが、カルバマゼピンによる薬疹の適切な予防法となることが証明され、HLA-A*31:01遺伝子型を用いた薬理遺伝学検査の臨床的有用性も実証された、と研究グループは述べている。

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