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ツムラ 中国事業に本格進出へ「日本の売上高と同等規模以上を目指す」

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2018年02月15日 PM04:30

ツムラの筆頭株主・中国平安保険グループと

株式会社ツムラの加藤照和社長は2月14日、同社の中国事業進出について記者会見し、自社技術を生かして生産した漢方薬類似の中国の伝統薬・中薬を現地企業との合弁会社で販売することで事業を拡大していく方針を明らかにした。当面の売上イメージについては、2027年に中国事業で100億元(約1700億円)とし、「日本の売上高と同等規模以上を目指す」と表明した。


株式会社ツムラ 加藤照和社長

2012年に「長期経営ビジョン~2021年ビジョン」を公表した同社は、この間を3年ごと3期にわけ、現在は「新2期中期経営計画(2016~2018年度)」。同ビジョンでは「グローバル・ニッチのTSUMURA」のスローガンのもと、重要戦略課題の1つに「中国における新規ビジネスへの挑戦」を掲げている。

既に中国では100%持株子会社の津村 () 有限公司の下に、漢方薬の原料生薬調達を主目的とする深セン津村薬業有限公司(1991年設立)、日本向けの漢方薬エキス製剤製造を行う上海津村製薬有限公司(2001年設立)の2つの100%孫会社を有しているが、いずれも日本向けが主で、深セン津村のみがわずかに中国向けの生薬や中薬製品の一種である刻み生薬を販売しているものの、その売上高は日本円で数千万円規模に過ぎない。

また、2016年には上海医薬集団股フン有限公司(本社・上海市)の子会社である上海市薬材有限公司と、中薬の一種である単一生薬のエキス顆粒である中薬配合顆粒の研究・開発、製造・販売を行う上海上薬津村製薬有限公司(津村中国出資比率49%)を設立しているものの、中薬配合顆粒の販売にかかわる法制度から株式支配体制で主導権は持てていないという現状がある。

そうした中で2017年には、中国4大保険会社の一角を占める中国平安保険(集団)股フン有限公司(本社・深セン市)との資本業務提携とそれに基づく合弁会社・平安津村有限公司(津村中国出資比率56%)、従来から生薬原料の調達先だった天津盛実百草中薬科技股フン有限公司(本社・天津市)との合弁会社・津村盛実製薬有限公司(同70%)の設立を発表。矢継ぎ早に中国事業を本格化させている。

AI、生体認証などのIT技術の導入にも意欲

加藤社長は中国の実状について(1)日本と同様の急速な高齢人口の増加、(2)高塩分、高脂肪、高糖分による若年層でのメタボリックシンドローム増加による疾病構造の変化、(3)薬草からの抗マラリア成分抽出による中国中医科学院の屠ユウユウ氏のノーベル医学生理学賞受賞、などを背景に中薬への注目度が急速に高まっていると説明。2016年市場規模にして8749億元(約14兆8900億円)、使用患者数で年間5億人とも推定される中薬市場は増加傾向を見せ、その安全性・品質向上をうたった中薬法が新たに2017年7月に制定されたことも紹介した。そのうえで加藤社長は「ツムラの生薬の安全性、有効性、品質は、40年近くにわたって築いてきた一貫した生薬生産管理システムという強みにより実現している」と述べ、中国での中薬事業の展開にあたっては「基本的な考えはツムラグループが品質管理、製造を担当し、合弁先が販売を行うという役割分担」との方針を明らかにした。

各合弁会社の役割については、3月に正式設立予定の津村盛実製薬が、中薬のうち日本の漢方薬にも近い、生薬成分を配合した「中成薬」の製造・販売とともに日本向けの漢方薬エキス製剤の製造も手掛ける計画。「中成薬については、津村の漢方製剤記述を応用しやすい古典的中成薬がメインになる」(加藤社長)としている。4月に設立予定の平安津村に関しては、その下に生薬、漢方薬、中薬など中国の津村グループで扱う原料、製品の分析機関を設立する。この分析機関では将来的にはツムラグループ以外の分析も受託する意向だ。また、銀行、保険、投資の3大事業をメインとする平安保険については「AI、生体認証などのIT技術を有し、それらをツムラの事業にも応用していきたい。例えば平安の顔認証技術は世界一とも噂されているが、これを将来的に人力に頼っている生薬の鑑定や選別の自動化に応用していきたい」(加藤社長)と強調した。

平安保険の提携医療機関5,000か所へのアプローチに期待

平安保険は登録ユーザー1億5000万人、提携医療機関5,000か所を擁するオンライン問診などが行える中国最大のネットの医療健康管理プラットフォーム「」を運営しており、このネットワークを新たに確立するツムラの中薬販売網につなげていきたい考え。加藤社長は「ツムラの持つ品質、技術、情報と平安グループの金融・ITの総合力と販売網を最大限に活用することで、平安津村を中国市場の中薬No.1ブランドに育て上げることを目指したい」との抱負を表明。中成薬市場での同社の競争力については「日本の漢方製剤1方剤当たりの1日薬価は100円弱。これに対し、中国国内での中成薬はそれを超えるといわれている。この点から日本の漢方製剤の技術を用いても安価で高品質のものを提供できると考えている」との見解を示した。

一方、同社の経営上大きな問題となっているのが10年前と比較して2倍以上と高騰している原料生薬の調達だ。中国事業の強化による生薬原価への影響については「既存の調達農家では栽培面積の規模拡大につながり、そこに対する作業効率化なども支援していくので、生薬単価はむしろ下がるのではないか」と見通した。なお、今後の事業開始計画については、平安津村の分析事業に関しては2019~2021年、平安津村、上海上薬津村、津村盛実製薬での製造・販売開始はいずれも2022年以降と見積もっている。

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