ロボット支援下膵切除術、高齢患者への安全性・有効性など検討すべき課題が多い
藤田医科大学は11月5日、ロボット支援下膵切除術に関する研究結果を発表した。この研究は、同大総合消化器外科の髙原武志教授、内田雄一郎講師ら、岡山大学病院消化器外科の藤原俊義教授、肝・胆・膵外科の高木弘誠講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Surgical Endoscopy」と「Cancers」に掲載されている。
ロボット支援下膵切除術(膵頭十二指腸切除術・膵体尾部切除術など)は、2020年に保険収載され、低侵襲な手術治療として徐々に普及しつつある。しかし、日本では本格的な導入から日が浅く、術後合併症の適切な予防策や、近年増加している高齢の患者に対する安全性・有効性など検討すべき課題が多く残されている。藤田医科大学病院と岡山大学病院は国内のロボット支援下膵切除術におけるhigh volume centerの一つであり、ともに協力して未解決の課題に取り組んでいる。
胆管内の一時的内瘻ステント留置で、術後合併症・胆管狭窄の発生が69%減少
今回研究グループは、ロボット支援下膵切除術に関し、胆管合併症と高齢者安全性の2つの観点で研究を実施した。まず、胆管の太さが15mm以上の患者では重要な胆管合併症である遅発性胆道狭窄は発生しておらず、胆管の太さが15mmより細い患者では手術中に一時的胆管内瘻ステントを留置することで遅発性胆道狭窄の発生を69%抑制することができていた。胆管内にステントなどの人工物を留置することで、術後の胆管炎が増加することが危惧されていたが、ステントを留置していなかった患者と比較しても胆管炎の発生率は増加していなかった(留置群17%、非留置群30%)。
80歳以上は79歳以下と比較で術後入院期間が長い傾向も、合併症発生頻度は同等
続いて、80歳以上の高齢者(59人)と79歳以下の非高齢者(321人)の治療成績を術式別に検討した。ロボット支援下膵頭十二指腸切除術では、手術時間や出血量は高齢者(36人)、非高齢者(177人)で同等であり、術後入院期間は高齢者22日、非高齢者14日と高齢者の入院期間は有意に長かったものの、膵液漏や胆汁漏などの重篤な合併症頻度は同等であった。ロボット支援下膵体尾部切除術でも、手術時間や出血量は高齢者(23人)、非高齢者(144人)で同等であり、術後入院期間は高齢者14日、非高齢者10.5日と高齢者の入院期間は有意に長くなる傾向が見られたが、膵液漏などの重篤な合併症頻度は同等であった。さらに、ロボット支援下膵切除術術後の重篤な合併症のリスク因子解析では、年齢(80歳以上)はリスク因子ではなかった。
膵疾患患者全体の治療成績向上に期待
今回の研究成果は、今後各医療機関で治療方針決定の参考となることに加え、最終的には膵疾患患者全体の治療成績の向上が期待される。今後も国内医療機関と連携して、ロボット支援下膵切除術の安全性向上に取り組んでいく、と研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース


