臨床に近い評価に不可欠な「カダバースタディー」、国内での基準体系化が課題だった
北海道大学は10月31日、「医療機器の研究開発におけるカダバースタディーに関するガイダンス」を策定したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の七戸俊明准教授らの研究グループによるもの。ガイダンスは、経済産業省および日本医療研究開発機構(AMED)により公表されている。

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近年、医療機器の開発現場では、臨床に近い環境での性能評価や安全性の確認が求められている。その中で、献体された遺体を用いた医学の研究開発「カダバースタディー」は、医療機器の開発に極めて有用な手法である。しかし、これまで日本では法的・倫理的観点を含めた適正な実施方法が明確に整理されておらず、企業や研究者が国内でなく海外で実施するケースがあった。そのため、日本の献体制度を尊重しながらこれを実施するために遵守すべき基準などの体系化が求められていた。
PMDA、行政、産業界などが協力し、国内初となる体系的ガイダンスを取りまとめ
今回の研究は、AMEDの2023~24年度事業「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業」の研究開発課題「医療機器開発におけるカダバースタディーに関するガイダンス策定」の一環として実施された。研究グループと日本外科学会CST推進委員会のコアメンバーが中心となり、アカデミア、行政、医療機器メーカー各社、医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの関係団体と協力し、ワーキンググループでの討議、学会との協議や関係省庁への確認、パブリックコメントの収集を経て、国内初となる体系的なガイダンスを取りまとめた。
献体制度の理念に基づき運用手順を例示、国内での研究推進・医療機器開発の加速に期待
同ガイダンスは、解剖学実習の学修経験がない工学系研究者などが研究に参加する際に必要となる、解剖の歴史、倫理的配慮と法令遵守、医療に関する基本的知識、そして多様な医療機器に対応した献体使用法などについて体系的にまとめている。献体を使用した医療機器の研究開発に関して、法的・倫理的観点から遵守すべき条件や実施における留意点を明確化した。研究目的の正当性、実施責任者の明確化、研究機関内の倫理審査体制など、献体制度の理念に基づき、法令や倫理指針等を遵守した適正な運用のための実施手順の例を示すことを試みたものであり、これにより、日本において社会の信頼を得ながら医療機器の研究開発を行う枠組みの形成に寄与すると考えられる。
「本ガイダンスを通じて、献体の精神を礎としたカダバースタディーが国内で推進されることで、高度で安全な医療機器の開発が加速し、革新的な医療の実現に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。
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