心房細動が将来の健康に与える影響、大規模データでは未検証
京都大学は10月28日、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する就労世代約1000万人の健康診断・医療データを分析し、健診で偶然見つかる「心房細動」が将来の脳梗塞や心不全の大幅なリスク上昇と関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の森雄一郎氏(博士課程学生)、広島大学大学院医系科学研究科の福間真悟教授(兼:京都大学大学院医学研究科教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Circulation」に掲載されている。

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心房細動は良く見つかり、かつ注意が必要な不整脈のひとつ。心臓内に血栓ができやすくなり、脳梗塞や心不全の原因になる。ただし、自覚症状がない人も多く、健康診断で偶然見つかることも少なくない。これまで、特に働く世代で偶然見つかった心房細動が、将来どの程度の健康リスクにつながるのかは、大規模データで検証されていなかった。
約1160万人の35~59歳の健診・医療データを分析、心房細動ありは1万1,790人
日本では多くの人々を対象に毎年心電図検査を含む健康診断が行われており、国際的にも貴重なデータ基盤を活かした研究が可能である。
研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する約1160万人の働く世代(35~59歳)の健診・医療データ(2015~2020年)を分析した。過去に心血管疾患の既往がない約950万人のうち、健診で新たに心房細動が見つかった人は1万1,790人(1年あたり約2,400人に1人)であった。
3年間で脳梗塞による入院5.38倍/心不全による入院18.35倍/死亡1.98倍のリスク増
年齢・性別などを揃えた対照群と比較した結果、3年間の追跡で以下のリスク上昇を確認した。脳梗塞による入院は5.38倍のリスク増加で3年間の累積発生割合は1.83%、心不全による入院は18.35倍のリスク増加で3年間の累積発生割合は3.87%、死亡は1.98倍のリスク増加で3年間の累積発生割合は0.78%であった。これらの結果は、性別・年齢層・生活習慣病の有無などを分けて解析しても一貫して認められた。
働く世代にとって重大な健康リスク、適切な対応が心疾患の予防に重要
この研究により、「働く世代において、健診で偶然見つかる心房細動は将来の重大な病気の前触れでありうる」ことが明らかになった。特に脳梗塞リスク5倍、心不全リスク18倍という結果は、心房細動が心不全の早期兆候である可能性を示唆している。心房細動が見つかったとしても、すぐに特別な薬の服用や手術が必要かどうかは人それぞれで医師の判断による。しかし、心臓の健康を見直す重要な機会と捉えることが大切である。禁煙、節酒、血圧や血糖、コレステロールの管理など、日常生活の改善が心疾患の予防につながる、と研究グループは述べている。
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