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糖尿病網膜症の発症・進展リスク、「夜型生活」の人で高いことが判明-順大

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2025年11月11日 AM09:20

クロノタイプの違いが、糖尿病網膜症の発症・進展、血糖マネジメントに与える影響は?

順天堂大学は10月28日、「夜型」の生活リズムを送っている「夜型クロノタイプ」の2型糖尿病を有する人では血糖マネジメントが悪化しやすく、糖尿病網膜症の発症・進展リスクが高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科代謝内分泌内科学の所雅子非常勤助手、三田智也准教授、綿田裕孝主任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetologia」に掲載されている。


画像はリリースより
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糖尿病網膜症は、高血糖が原因で網膜の微小血管に障害が起こる、糖尿病に伴う慢性合併症の一つ。失明の主要な原因の一つであるため、発症・進展を防ぐことが非常に重要だ。糖尿病網膜症の発症・進展には、糖尿病の罹病期間、血糖マネジメントの状態、そして収縮期血圧などが関係することが報告されている。また、血糖マネジメントの改善は、糖尿病網膜症の発症・進展リスクの低下につながることが示されている。さらに、生活習慣も糖尿病網膜症の発症・進展リスクに大きく影響することが報告されている。例えば、喫煙や不健康な食事、運動不足はリスクを高める一方で、適度な飲酒、定期的な運動、健康的な食生活は糖尿病網膜症の発症・進展リスク軽減に寄与することが示されている。

生活習慣の中で近年注目されている「クロノタイプ」とは、個人の朝型・夜型の生活リズムの特性を指す。夜型の人は夜遅くまで光を浴び、食事も遅く、身体活動量が少なく、肥満や2型糖尿病の発症リスクが高いことが知られている。2型糖尿病を有する人でも夜型クロノタイプはHbA1cが高い傾向にあり、アメリカ糖尿病学会は夜型クロノタイプの人は血糖マネジメントの悪化に注意が必要だとしている。しかし、2型糖尿病を有する人々においてクロノタイプが長期的に血糖マネジメントや糖尿病合併症の発症・進展に与える影響を調査した前向き研究はほとんどなかった。

そこで研究グループは今回、2型糖尿病を有する人々を対象に、生活習慣の中でも特にクロノタイプの違いが糖尿病網膜症の発症・進展および長期的な血糖マネジメントにどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。

心血管イベントのない2型糖尿病患者の生活習慣と糖尿病網膜症の関連を最大10年調査

研究では、順天堂大学医学部附属順天堂医院などに通院中で心血管イベントの既往がない2型糖尿病を有する人731人を対象に、生活習慣と糖尿病網膜症の発症・進展との関連を最大10年間にわたり調査した。評価項目には食事、身体活動、睡眠時間・質、生活リズムなどを含み、クロノタイプ(朝型・夜型)は「Morningness–Eveningness Questionnaire(MEQ)」で判定した。MEQは16~86点の範囲で、低得点ほど夜型、高得点ほど朝型の傾向を示す。

夜型クロノタイプほど糖尿病網膜症のリスクが有意に高いと判明

平均追跡期間は7.5年で、57人(7.8%)に糖尿病網膜症の発症・進展が認められた。解析の結果、年齢・性別・既知のリスク因子を調整しても、夜型クロノタイプほど糖尿病網膜症のリスクが有意に高いことが示された。具体的には、夜型クロノタイプ群は中間型クロノタイプ群に比べ2.29倍、朝型クロノタイプ群に比べ2.09倍のリスクが増加していた。

血糖管理・生活リズムのほか、網膜生体リズム破綻などが影響の可能性

夜型クロノタイプ群は、若年・肥満傾向で糖尿病罹患期間が短い一方、HbA1cやトリグリセリドが高く、HDLコレステロールが低い傾向が認められた。また、夜型クロノタイプ群では、睡眠の質の低下、抑うつ症状の多さ、睡眠時間の短さ、身体活動量の少なさといった特徴を有し、就寝・起床が遅い、食事時間が遅い、夜食が多い、朝食欠食が多いなどの生活習慣も明らかになった。観察期間中、夜型クロノタイプ群ではHbA1cやインスリン使用率の増加が認められた。さらに血糖マネジメント状態(HbA1c)を考慮した解析でも、夜型クロノタイプであること自体が糖尿病網膜症の発症・進展リスクと関連する独立したリスク因子であった。

以上より、夜型生活リズムを持つ2型糖尿病を有する人々では、糖尿病網膜症の発症・進展リスクが高まることが初めて示された。この背景には血糖マネジメントの悪化や睡眠・食習慣の乱れに加え、網膜の生体リズム破綻による炎症や酸化ストレスが関与している可能性がある。

2型糖尿病の長期的な予後改善に、クロノタイプを考慮した個別化医療が貢献する可能性

今回の研究により、夜型の生活リズムをもつ2型糖尿病を有する人では、糖尿病網膜症の発症・進展リスクが高いことが明らかにされた。今後は、夜型クロノタイプが血糖マネジメントや網膜の炎症・酸化ストレスにどのように影響を与えるのか、その具体的なメカニズムを解明することが重要だ。また、生活リズムを整える行動介入や、光曝露・睡眠改善・食事タイミング調整といった「時間医学」に基づく介入が、糖尿病網膜症や他の合併症の予防につながるかどうかを検討していく必要がある。さらに、クロノタイプを考慮した個別化医療を進めることで、2型糖尿病を有する人の長期的な予後改善に貢献できる可能性がある。

「これまで糖尿病網膜症の発症・進展には血糖マネジメントや血圧などが重要と考えられてきたが、本研究により、生活リズムの傾向であるクロノタイプが独立したリスク因子となることがわかった。生活リズムを改善することが糖尿病合併症の予防につながる可能性があり、患者一人ひとりの生活習慣に寄り添った新しい治療・予防戦略を考える上で、大きな一歩になると考えている」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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