腸内環境を整える食用サボテン「ウチワサボテン」
中部大学は9月18日、食用サボテン・ノパレア・コケニリフェラ(Nopalea cochenillifera)の摂取が腸内細菌叢、脂質代謝、免疫応答に及ぼす影響を動物実験で詳しく調べた結果を発表した。この研究は、同大大学院応用生物学研究科の横山さや香大学院生、食品栄養科学科管理栄養科学専攻およびサボテン・多肉植物研究センターの田中守准教授、藤田医科大学医学部医科プレ・プロバイオティクスの栃尾巧教授(腸内細菌叢評価)、名古屋学芸大学の山田千佳子教授(免疫関連遺伝子発現解析)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。

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サボテンは驚異的な生命力、環境耐性、栽培特性からさまざまな条件でも栽培できる有用な植物で、栄養価も高く、特にミネラルや食物繊維を豊富に含んでいる。抗酸化作用や血糖値、中性脂肪、LDL-コレステロールを下げる作用が報告されており、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の予防あるいは改善効果が期待されている。さらに近年、腸内細菌叢と代謝疾患の関係が注目され、腸内環境を整える食品素材の研究が進められている。これまで研究グループは、ウチワサボテンが腸内環境を整え、免疫機能を高めることを報告してきた。
ウチワサボテン摂取が腸内細菌叢・脂質代謝・免疫応答に及ぼす影響は?マウスで評価
そこで研究グループは今回、ウチワサボテンのノパレア・コケニリフェラの摂取が腸内細菌叢、脂質代謝、免疫応答に及ぼす影響を動物実験で詳しく調べた。具体的には、通常食および高脂肪食に10%のサボテン粉末を添加した飼料を動物実験用の近交系マウスC57BL/6Jに12週間与え、腸内細菌叢の多様性と構成、短鎖脂肪酸、血清脂質、糞便中コレステロール排泄量、免疫関連遺伝子発現を総合的に評価した。
体重や肝臓重量低下、腸内細菌叢の多様性上昇、酪酸産生菌が増加
その結果、体重や肝臓重量の低下、腸内細菌叢の多様性が有意に上昇し、酪酸産生菌であるLachnospiraceaeが増加することを明らかにした。
血清総コレステロール・non-HDLコレステロール・遊離脂肪酸が低下
また、糞便中コレステロール排泄量が増加し、血清総コレステロールやnon-HDLコレステロール、遊離脂肪酸が有意に低下することを明らかにした。さらに、通常食条件では酢酸・プロピオン酸・酪酸などの短鎖脂肪酸が増加し、免疫関連遺伝子発現の変動も認められ、免疫応答への関与が示唆された。
食用サボテン摂取、コレステロール代謝や腸管免疫に有益な影響を示唆
これらの結果から、食用サボテン摂取が腸内細菌叢を介して短鎖脂肪酸の産生を高め、コレステロール代謝や腸管免疫に有益な影響を与えるメカニズムが示唆された。同研究成果は、愛知県春日井市の地域資源である「食べるサボテン」の新たな健康機能を科学的に裏付けるものであり、生活習慣病予防や機能性食品開発への応用、地域ブランド強化への貢献が期待される、と研究グループは述べている。
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