繰り返し腫瘍発生のVHL病、頻回な手術治療など患者負担が課題
MSD株式会社は8月18日、経口低酸素誘導因子2アルファ(HIF-2α)阻害剤「ウェリレグ(R)錠40mg」(一般名:ベルズチファン)について、フォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍、および、がん化学療法後に増悪した根治切除不能又は転移性の腎細胞がんの治療薬として発売したと発表した。

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フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は、VHL遺伝子の変異によってHIF-2αが過剰発現し、腫瘍が発生する難治性の希少疾患。日本の推定患者数は600~1,000人とされている。発生する主な腫瘍は、中枢神経系(小脳、延髄、脊髄)血管芽腫、網膜血管腫、腎細胞がん(RCC)、腎嚢胞、褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)、膵神経内分泌腫瘍、膵嚢胞、精巣上体嚢胞腺腫、子宮広間膜嚢胞腺腫、内リンパ嚢腫瘍。いずれも若年で発症し、複数の部位に同時に発生する(多発性)、生涯にわたって発症を繰り返す(再発性)という特徴がある。腫瘍の発生部位によって、多血症、高血圧、視力障害、運動障害、膀胱直腸障害、腎不全、不妊症などの合併症が現れることがある。治療方法には腫瘍の摘出手術や放射線治療などがあるが、手術の侵襲に伴う障害が発生する場合や頻回の手術が必要になる場合があることなど患者の生活の質(QOL)への影響は大きく、新たな治療法が望まれていた。
VHL病で初の全身療法、治療後進行の腎細胞がんに対する新たな治療選択肢
ウェリレグは、経口投与可能な新しい作用機序の低分子HIF-2α阻害剤。がん細胞においてVHLタンパク質の機能が喪失している状態において、HIF-2αとHIF-1βのヘテロ二量体形成を選択的に阻害する。その結果、血管新生・増殖および腫瘍代謝に関連する低酸素下で誘導される遺伝子の転写を阻害することで抗腫瘍効果を示す。
同剤は、希少疾患のVHL病における初めての全身療法であるとともに、PD-1またはPD-L1阻害剤といった免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬VEGFR-TKIによる治療後に進行した腎細胞がんに対する新しい治療選択肢である。特に、繰り返し腫瘍が発生するVHL病に対しては、これまで手術での腫瘍摘出や放射線照射といった患者の負担が大きな治療に限られていた。
同社のプラシャント・ニカム代表取締役社長は「ウェリレグの発売により、新たな治療を待ち望んでいた患者に貢献できる選択肢を提供できることを大変嬉しく思う」と、述べている。
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