てんかん発作開始~救急搬送まで20~40分という「時間の障壁」
アキュリスファーマ株式会社は6月24日、てんかん重積状態、又はてんかん重積状態に移行する恐れのある発作が起きた時に投与する「スピジア(R)点鼻液5mg、同7.5mg、同10mg」(一般名:ジアゼパム)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。

てんかんの原因、症状、重症度は患者個々人によって大きく異なり、同様にてんかん発作も患者ごとに多様な性質をもっている。その中でも、1日に何度も繰り返される発作や一定時間が経過しても停止しない発作(てんかん重積状態)を抱える患者においては、脳へのダメージ、生命予後への影響が懸念され、速やかな治療介入が必要とされる。しかし、現状、院外での発作対応は救急車で医療機関に搬送し、医療関係者による投薬治療を受けることが中心で、発作開始から医療機関に救急搬送されるまで20~40分を要することから、時間の障壁がある。患者とその家族、医師を対象とした海外の大規模調査では、繰り返すてんかん発作が患者本人はもとより、家族における精神的、社会的、経済的な負担についても報告されている。
てんかんは、脳の神経細胞の過剰な電気的興奮に伴って、意識障害やけいれんなどの症状(てんかん発作)を引き起こす慢性的な脳の病気。日本では約60万~100万人、1,000人に5~8人がてんかんに罹患していると言われている。医療の進歩により、多くのてんかん患者は適切な診断や抗てんかん薬などによる治療を受けることでてんかん発作を抑えることができ、通常の社会生活を送っている。しかし、約3割の患者やその家族・介護者は繰り返す発作に対応することが求められている。
国内初の経鼻投与型抗けいれん薬、成人は医療機関外で投与が可能なレスキュー薬
ジアゼパムは、注射剤などの剤形で、てんかん発作時の治療薬として日本の医療現場で約60年使用されている。ジアゼパムの坐剤は、医療機関外においても患者や介護者などの医療関係者以外の方に使用されてきた。
同剤は米国Neurelis社が開発し、アキュリスファーマ社が日本およびアジア太平洋地域での独占的開発・商業化に関するライセンスを有している。同社は2020年にジアゼパム経鼻液(米国商品名:VALTOCO(R))について「6歳以上のてんかん患者における通常の発作パターンとは異なる間欠性の典型的な発作頻発(すなわち、群発発作、急性群発発作)のエピソード」を効能効果として米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。そして、2025年4月に2歳以上を効能効果として追加で承認を得た。
同剤は国内で初めての経鼻投与型抗けいれん薬であり、また成人においては初めての医療機関外で投与が可能なレスキュー薬(てんかん発作が起こった時に、発作を止めるために介助者またはそれに代わるものが緊急的に投与する治療薬)として承認された。現在の薬剤治療においては、対象患者、投与するまでの時間、救急搬送においてアンメットニーズがあり、スピジアはそれらを解決し得る薬剤である。今回の承認申請は、多施設共同国内第3相臨床試験、国内第1相臨床試験、海外臨床試験の結果に基づいている。
谷垣任優代表取締役社長は、「いつ起こるかわからないてんかん発作に苦しむ患者さんおよび介護者の皆様にとって、この新たな治療選択肢が貢献できることを切に願っている」と、述べている。
▼関連リンク
・アキュリスファーマ株式会社 プレスリリース