表皮角化細胞のエピジェネティクス制御、ビタミンCの役割は?
東京都健康長寿医療センターは4月30日、ビタミンCは、細胞増殖に関連する遺伝子のDNA脱メチル化(エピジェネティクス制御のひとつ)を促進することにより、表皮角化細胞(ケラチノサイト)の増殖を促進することを明らかにしたと発表した。この研究は、同センターの石神昭人副所長、佐藤綾美研究員(現:東洋大学准教授)、北陸大学の佐藤安訓准教授、田中秀樹学部生(研究当時)、木村敏行教授、ロート製薬株式会社のフローレンス研究員、桑野明香里研究員、佐藤康成研究員、石井強研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Investigative Dermatology」に掲載されている。

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表皮は、基底層の表皮角化細胞(ケラチノサイト)が増殖と分化(角化)を繰り返し、上方に押し上げられる過程で有棘層、顆粒層、角層を構成する。増殖する細胞は、基底層の細胞のみであり、有棘層、顆粒層、角層の細胞は増殖せず、分化のみ進行する。表皮の層状構造を形成するためには、表皮角化細胞の増殖と分化がバランス良く、厳密に制御される必要がある。
近年、ビタミンCはエピジェネティクス制御に重要なDNA脱メチル化酵素(TET:Ten-eleven translocation)の補因子として作用することが明らかになってきた。エピジェネティクス制御とは、DNAの塩基配列を変化させることなく、DNAやヒストンタンパク質の化学修飾により遺伝子の発現を制御する仕組みである。しかし、表皮角化細胞のエピジェネティクス制御におけるビタミンCの役割は依然として不明だった。
ビタミンC、細胞増殖に関連遺伝子のDNA脱メチル化を介して表皮角化細胞増殖を促進
今回の研究では、ヒトの表皮を模倣したヒト培養表皮を構築し、表皮角化細胞の増殖と分化におけるビタミンCのエピジェネティック制御について調べた。その結果、表皮角化細胞にビタミンCが取り込まれると、表皮の厚み、細胞の増殖、およびDNA脱メチル化の指標である5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hmC)が増加した。また、この効果は、DNA脱メチル化酵素の阻害剤により減弱した。さらに、DNAマイクロアレイおよび全ゲノムバイサルファイトシーケンス(WGBS:Whole-genome bisulfite sequencing)解析により、細胞増殖に関連する12遺伝子の発現がビタミンCにより増加することがわかった。
年齢とともに薄くなる肌へ新アプローチの可能性
今回の研究により、ビタミンCは、細胞増殖に関連する遺伝子のDNA脱メチル化を促進することにより、表皮角化細胞の増殖を促し、表皮の厚みを増加させることがわかった。加齢に伴い表皮は菲薄化することがよく知られている。ビタミンCは、加齢に伴う表皮の菲薄化を防ぐのに有用である可能性がある。年齢とともに薄くなる肌への新たなアプローチとなる可能性がある、と研究グループは述べている。
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