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脊髄損傷患者向けのしびれ同調TENS、プラセボ比較検証でも有効と判明-畿央大ほか

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2025年07月15日 AM09:30

個人のしびれ感に合わせて介入する「しびれ同調TENS」、プラセボ比較は未実施だった

畿央大学は6月26日、同大学が脊髄損傷患者に向けて開発したしびれ同調経皮的電気神経刺激(しびれ同調TENS)が、プラセボ効果よりも有意に「しびれ感」を改善することが明らかになったと発表した。この研究は、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターおよび長崎大学生命医科学域(保健学系)の西祐樹氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Spinal Cord Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
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脊髄損傷患者において「しびれ感」は主に両側に生じる一般的な合併症であり、日常生活活動や生活の質を著しく低下させる。しびれ感に対する第一選択治療は薬物療法であるが、その効果は限定的で、副作用の報告もある。そのため、しびれ感は未解決の問題(アンメット・ニーズ)と位置づけられてきた。この問題に対し、研究グループはしびれ同調TENSを開発。しびれ同調TENSは電気刺激のパラメータを個人のしびれ感に一致させるテーラーメイドな介入であり、しびれ感が改善することを先行研究にて報告している。一方、従来の電気刺激療法は、電気刺激本来の効果のみならずプラセボ効果の影響が報告されている。しびれ同調TENSにおいても同様の作用が推察されるが、その影響はまだ明らかになっていなかった。

集団・個人レベルの両方でしびれ感改善、アロディニアにも有効

一般的に、プラセボ効果の影響はランダム化比較試験により検証されるが、個人への一般化が制限され、個人内介入効果が不明瞭になる可能性がある。そこで研究グループは、脊髄損傷患者6人を対象に、無作為化プラセボ対照N-of-1試験を実施し、しびれ同調TENSの集団および個人内の効果を検証した。各試験はしびれ同調TENSとプラセボ効果を反映するSham-TENS(各7日間、1日60分刺激)の2つの治療で構成され、各介入はランダムな順序で2セット行われた。主要評価としてしびれ感の主観的強度(Numerical Rating Scale(NRS))を毎日評価し、副次評価として各期で短縮版マクギル痛み質問表(SF-MPQ-2)を評価した。統計解析では、プラセボ効果(Sham-TENS)を差分したしびれ同調TENSの介入効果(しびれ感NRS)を集団―個人内で検証するために、階層的ベイズモデルを実施した。また、しびれ感を含めた疼痛関連症状への波及効果(SF-MPQ-2)はベイズt検定を用いてしびれ同調TENSとSham-TENSで比較した。その結果、しびれ同調TENSは集団レベルおよび個人レベルの両方で、臨床的に意義のある最小変化量を高確率(96~100%)で上回った。

また、Sham-TENSと比較して、しびれ同調TENSは触るだけで痛いアロディニア、チクチク感、しびれ感に関するSF-MPQ-2の項目で決定的証拠(Bayes Factor10 > 1000)としてのしびれ感の改善を示した。以上の結果は、しびれ同調TENSがしびれ感を有する脊髄損傷患者に集団的に有効であるとともに、テーラーメイドな治療のため、各個人の多様なしびれ感(ビリビリ・チクチクの内省や強度)にも有効であることを示唆している。

脊髄損傷患者に向けた非薬物療法として、新規標準介入の可能性

今回の研究は、集団レベルおよび個人レベルの両方で、しびれ同調TENSはプラセボ効果よりもしびれ感を改善することを初めて明らかにした。しびれ同調TENSが、非薬物療法としてしびれ感に対する新規標準介入となる可能性がある。「今後は大規模な介入効果検証や他疾患のしびれ感に対する効果検証を行う予定だ」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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