ポストコロナ時代、「プレゼンティーズム」の実態は?
昭和医科大学は6月26日、全国の就業者1万人への調査で、約3人に1人が健康問題によって仕事の生産性が低下している実態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部衛生学公衆衛生学講座の吉本隆彦准教授、小風暁教授、テーラーメイドバックペインクリニックの松平浩医学博士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載されている。

働き方の多様化や高齢労働者の増加が進む中、労働者の健康状態が仕事のパフォーマンスに与える影響が注目されている。近年は、欠勤(アブセンティーズム)だけでなく、健康問題を抱えながら働き続けることで生産性が低下する「プレゼンティーズム」が、企業の経済的損失につながる重要な課題とされている。これまでの研究はCOVID-19以前に実施されており、パンデミックを契機にライフスタイルや働き方が変化したポストコロナ時代の実態は十分に明らかになっていなかった。
2023年・就業者1万人対象調査、健康問題と労働生産性の関係を分析
今回の研究では、全国の就業者1万人を対象に調査を行い、健康問題と労働生産性の関係について分析した。2023年2~3月に全国20~69歳の就業者1万人を対象としたインターネット調査を実施。質問票では、過去4週間において仕事に影響を及ぼした健康問題の有無や具体的な症状、仕事への影響度合い(パフォーマンスの低下)などを尋ねた。
損失額、最大要因の腰痛で年間約6480万円/1,000人と試算
その結果、35.6%の労働者が過去4週に仕事へ影響を与える健康問題を経験。腰痛・首肩こり・メンタルヘルスが主因であった。損失額の試算は、最大要因である腰痛で年間約6480万円/1,000人。首の痛み・肩こり約4,600万円、メンタルヘルス不調約4,340万円と続いた。
健康問題最多、20代メンタルヘルス不調/30代首の痛み・肩こり/40代以降腰痛
また、20代ではメンタルヘルス不調、30代では首の痛み・肩こり、40代以降では腰痛が最も多い健康問題であった。
人手不足が深刻化するポストコロナ時代において、生産性確保は企業の最重要課題である。「健康経営」の分野でもプレゼンティーズムは、欠勤と並んで注目される重要な健康指標であり、これまで見過ごされてきた「働きながらの生産性低下」に着目した対策が求められている。健康経営の投資対象を可視化することで、エビデンスに基づく適切な腰痛・肩こり予防プログラムの導入を後押しする、と研究グループは述べている。
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・昭和医科大学 プレスリリース