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僧帽弁逆流症に合併する重症三尖弁逆流症の特徴と予後の実態を調査-順大ほか

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2025年03月14日 AM09:00

、三尖弁逆流症合併は少なくない

順天堂大学は3月5日、国内26施設と心房性機能性僧帽弁逆流症の実態に関する共同研究において、同疾患に合併する三尖弁逆流症に関する調査を行い、重症三尖弁逆流を合併していると死亡や心不全入院のリスクが高いことが明らかになったと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室・循環器内科学講座の金子智洋助教、鍵山暢之特任准教授、南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は「European Journal of Heart Failure」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心臓には血液の流れを調整する弁が4つあり、僧帽弁は心臓の左心房と左心室、三尖弁は右心房と右心室の間にあり、心臓の動きに合わせて開閉することで、心臓の中で血液が逆流しないようにする役割を担っている。僧帽弁逆流症は僧帽弁が、三尖弁逆流症は三尖弁が閉じられず、血液が逆流することで心不全を引き起こす。機能性僧帽弁逆流症は僧帽弁自体に問題はないものの、弁を支えている心房や心室に問題が生じることで僧帽弁が閉じられなくなり逆流が起きる病気である。

近年、不整脈などが長く続くことにより心房が極端に大きくなることで僧帽弁の合わさりが悪くなり、逆流を生じる心房性機能性僧帽弁逆流症という病気が知られるようになった。心房性機能性僧帽弁逆流症の患者では、三尖弁にも影響が及ぶことで三尖弁逆流症が合併することが少なくない。三尖弁逆流症は三尖弁自体には問題がなくても、心房や心室が極端に大きくなることで三尖弁の合わさりが悪くなり、血液が逆流することで心不全を引き起こすことがある。心房性機能性僧帽弁逆流症やその原因となる不整脈は右心房や右心室にも影響を及ぼし、三尖弁逆流症を合併する。しかし、心房性機能性僧帽弁逆流症という病気自体が比較的新しい概念であり、大きな疫学調査がなされておらず、合併した三尖弁逆流症の特徴や予後についてはあまりわかっていなかった。

国内26施設が参加のREVEAL-AFMR研究データを解析

今回研究グループは、心房性機能性僧帽弁逆流症の特徴や治療成績を調査した国内26施設の共同研究()のデータを用いて、合併する三尖弁逆流症の特徴や予後を分析した。2019年に実施されたすべての心臓超音波検査の結果から診断された中等症以上の心房性機能性僧帽弁逆流症1,007例のうち、僧帽弁と三尖弁以外の弁に問題のある患者、もともと三尖弁に対して手術をされている患者、三尖弁自体に大きな異常がある患者等を除いた792人を調査対象とした。

重症三尖弁逆流症合併患者の平均年齢は80歳、非重症群より高齢

792人のうち、118人(14.9%)が重症の三尖弁逆流症であり、なかでも僧帽弁逆流が重症の患者では34.6%が重症三尖弁逆流症を合併していた。三尖弁逆流症の重症群(平均年齢80歳)は、非重症群(平均年齢77歳)よりも高齢で、心不全症状が強い(心不全症状が強い患者の割合が重症群では18%、心不全症状が強い患者の割合が非重症群では7.1%)という結果だった。高齢であることや永続性心房細動や慢性呼吸性肺疾患を合併していると重症三尖弁逆流症を合併しやすいことが明らかになった。

重症群は非重症群に比べ1.65倍の死亡や心不全入院のリスク

さらに、重症群は非重症群と比較し、1.65倍の死亡や心不全入院のリスクを有していた。中等症以上の三尖弁逆流症のうち150人(41%)は右心房(心房性機能性三尖弁逆流症)、217人(59%)は右心室(心室性機能性三尖弁逆流症)が大きくなってしまうことにより逆流が生じていることも判明した。重症三尖弁逆流症の機序(心房性か心室性か)による予後の差はみられなかった。

「心房性機能性僧帽弁逆流症に合併する三尖弁逆流症の実際の有病率や特徴、予後への影響が明らかになった。これにより、心房性機能性僧帽弁逆流症に対する治療戦略を考える上で、三尖弁の評価と適切な管理が重要であることがわかった。心房性機能性僧帽弁逆流症に合併する三尖弁逆流症に対する最適な治療選択を調査するため今後さらなる研究が期待される」と、研究グループは述べている。

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