見直されるガバペンチンの転倒リスク、安全性に新知見
ガバペンチンは、オピオイド系鎮痛薬の代替薬として慢性疼痛や神経痛の緩和に広く用いられているが、高齢者に投与した場合、転倒リスクを高めるという報告もある。このような背景から高齢者へのガバペンチンの処方には慎重になるべき、という意見もある。しかし、米ミシガン大学医学部内科のAlexander Chaitoff氏らの最新の研究で、この鎮痛薬が当初考えられていたよりも高齢者にとって安全である可能性が示唆された。

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研究を主導したChaitoff氏は、「ガバペンチンは、軽度の転倒による医療機関への受診回数を減少させる傾向を示したが、重症度のより高い転倒関連事象(股関節骨折や入院など)リスクとの関連は確認されなかった」と述べている。同氏らの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に1月7日掲載された。
ガバペンチンの処方件数は2020年には5000万件近くに達したが、この薬が高齢者の転倒リスクを高める可能性を指摘した複数の研究の影響で、2022年には処方件数が20%減少した。しかし、研究グループは、適応となる疼痛疾患自体も転倒リスクを高めることから、ガバペンチンによる転倒リスクが誇張されている可能性があると考えた。このような背景から、研究グループは、ガバペンチンと、転倒リスクを高めるとの報告がない神経痛治療薬デュロキセチンの転倒リスクを比較検討することとした。
この研究では、2014年1月から2021年12月の間に糖尿病、帯状疱疹、線維筋痛症に関連する神経痛のためにガバペンチンまたはデュロキセチンを処方された65歳以上の高齢者5万7,086人(ガバペンチン5万2,152人、デュロキセチン4,934人)のデータを収集・分析した。主要評価項目は、薬剤の投与開始後6カ月以内の、あらゆる転倒による受診リスクとした。副次評価項目は重度の転倒関連イベント(転倒による股関節骨折、救急外来受診、または入院と定義)の発生リスクとした。
その結果、ガバペンチンを処方された患者では、デュロキセチンを処方された患者に比べて、あらゆる転倒のリスクが全体で48%(ハザード比0.52、95%信頼区間0.43~0.64)低いことが判明した。しかし、重度の転倒関連イベントの発生リスクに関しては、両群に違いは認められなかった。
研究グループは、「高齢者において、ガバペンチンが転倒リスクを高めないとは断言できない。しかし、ガバペンチンの投与開始から6カ月間における転倒リスクは、他の代替薬と比較して高いわけではなく、むしろ安全性の面ではより適している可能性がある」と結論付けた。
また、研究グループは、今回の研究の限界点として、対象者にフレイルの高齢者が少なかったため、転倒件数が過小評価された可能性があることを挙げている。
▼外部リンク
・Assessing the Risk for Falls in Older Adults After Initiating Gabapentin Versus Duloxetine

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