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胎児期の間欠的低酸素曝露、生後の顎骨成長を阻害する機序明らかに -東京医歯大ほか

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2024年06月17日 AM09:00

妊娠中の閉塞性睡眠時無呼吸症、出生児に成長障害を引き起こす可能性

東京医科歯科大学は6月11日、妊娠期の間欠的低酸素(IH)状態モデルラットからの出生仔の解析を行い、胎児期のIH曝露が出生後長期にわたり出生仔における下顎骨の成長阻害をもたらす新規病態を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野の小野卓史教授、細道純准教授、鈴木拓望大学院生(現 同大病院快眠歯科いびき・無呼吸外来兼担)、大阪大学大学院医学系研究科法医学教室の前田秀将特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Physiology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

妊娠中の体重増加やホルモン変化は、(OSA)を好発させ、母体のIH血症が胎児の発育に与える影響が懸念されている。このように胎児期から出生後の発達期におけるさまざまな環境への曝露が、成長後の健康や病気の発症リスクに影響を及ぼすというDOHaD仮説が注目され、母体の低酸素状態が、出生児の成長発達障害や生活習慣病の発症リスクにもなる可能性が唱えられている。

これまで、胎児期にIH状態に曝露された出生仔ラット・マウスは、出生時にはやや低体重で呼吸状態にも異常が認められること、さらに成獣期には体重の増加、インスリン抵抗性、学習機能障害が起こることが報告されている。一方、胎児期のIH曝露と出生後の成長阻害を結ぶメカニズムは不明だった。

妊娠IH曝露ラット確立、雄の出生仔で下顎の成長抑制を確認

このような背景のもと、研究グループは、妊娠期OSAの疾患モデル動物として、この疾患の呼吸病態を再現した妊娠IH曝露ラットを確立し、出生仔の解析を通じて、胎児期の低酸素曝露の出生仔の成長阻害リスクと病態機構を検証した。

CT画像の解析により、出生時から成獣となる生後10週齢まで、雄雌の出生仔の骨格成長を追跡した結果、胎児期にIH曝露された雄の出生仔において、生後5週齢にて、下顎骨の高径や下顎骨体の皮質骨幅の減少が認められ、下顎の成長抑制が示唆された。一方、雌の出生仔において、そのような顎骨の成長抑制は認められなかった。

雄の出生仔、10週齢まで軟骨増殖を促す転写因子の発現が減少

さらに、IH曝露による下顎骨の生後成長の障害メカニズムを探るため、下顎骨の成長中心である下顎頭軟骨を対象に、遺伝子発現量の変化の解析を行った結果、雄の出生仔においては、成獣となる出生後10週齢まで、低酸素応答に関わる転写因子()の発現上昇とともに、軟骨増殖を促す転写因子(SRY-box9:)の発現減少が生じていることが認められた。

妊娠中睡眠呼吸障害による出生児の成長発育障害の予防・治療法開発につながる可能性

日本における睡眠時無呼吸症の患者数は、2019年の報告では、約940万人以上と推定され、OSAは21世紀の「国民病」とも言われている。しかし、自覚症状が乏しいことから、厚生労働省の社会医療診療行為別統計(旧:社会医療診療行為別調査)によると、実際に治療を受けているのは約64万人程度とされている。また、晩婚・晩産化に伴う高齢出産の増加にともない、今後、日本における生活習慣病や睡眠呼吸障害のリスクをもつ女性による出産増加が見込まれる。

妊娠中の睡眠呼吸障害は、流産、切迫早産、発達障害児の出産の原因にもなることから、胎児期の低酸素症による出生後の成長発育障害の発症リスクの検証は、日本が健康長寿社会を目指す上で、喫緊の重要課題である。

「研究結果は、胎児期の低酸素曝露が、出生後長期に渡り、顎骨成長を阻害するという新たな病態機構の可能性を、国内外で初めて示すとともに、DOHaD仮説のもと、妊娠中の睡眠呼吸障害による出生児の成長発育障害に対する新たな予防・治療法の開発へとつながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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