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同じ匂いでも、共に提示された言葉によって感じ方・脳活動が変わると判明-東大ほか

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2024年05月09日 AM09:00

匂いの感じ方と密接な「一次嗅覚野」、非常に小さく言葉ラベルの影響検出が困難

東京大学は4月26日、超高磁場のfMRIを用いた検証により、同じ匂いを嗅いでも、異なる言葉ラベルを与えられると、匂いの感じ方および一次嗅覚野の脳活動が変化することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院農学生命科学研究科の岡本雅子准教授、東原和成教授、大阪大学大学院生命機能研究科の西本伸志教授、(NICT)未来ICT研究所脳情報通信融合研究センターの黄田育宏副室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Human Brain Mapping」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ヒトは言語を介して世界を認識できる。一方、世界を言語化することで思い込みが生じて認識が変化することもあり、特に、匂いの感じ方は匂いを表す言葉(以下、言葉ラベル)の影響を強く受けることが知られている。言葉ラベルがヒトの匂いの脳内情報伝達に与える影響を解明することは、ヒトが世界をどのように認識するのかを理解する上で重要な足がかりとなる。しかし、言葉ラベルが脳情報処理に与える影響は十分に解明されていない。

匂いの感じ方との密接な関係が知られる脳領域として一次嗅覚野が挙げられるが、これまでの研究では、言葉ラベルの影響は一次嗅覚野より下流の脳領域(前頭眼窩野や前帯状皮質)において報告されていた。一次嗅覚野におけるラベルの影響が明らかになっていなかった理由の一つとして、一次嗅覚野が非常に小さい領域であるため、ラベルの影響を検出するのが難しかった可能性が考えられる。

超高磁場fMRIで匂いを嗅いでいる際の脳活動を高解像度計測、言葉ラベル2つを同時提示

そこで、今回の研究では高解像度な計測が可能な超高磁場fMRIを用いて、従来用いられてきた3ミリメートル角の解像度と比較すると27倍の解像度にあたる1ミリメートル角の空間解像度で一次嗅覚野の脳活動を検証した。同じ匂いに対して異なる思い込みを与えるために、1つの匂いに対して、その匂いの名前として違和感のない2つの言葉ラベルをそれぞれ同時に提示。また、この実験系で匂いの感じ方が変化するのかを検証するために、言葉でラベルされた匂いの主観的な感じ方の違いについて評定を行った。

同じ匂いでも異なる言葉ラベルで匂いの感じ方・一次嗅覚野活動が変化

まず、主観評定を検証したところ、同じ匂いに対して同じ言葉がラベルされた場合に比べて、2つの異なる言葉がラベルされた場合の方が、匂いをより違って感じることが示された。このことから、同じ匂いであっても異なる言葉ラベルが与えられると匂いの感じ方が変化することが示された。

次に、一次嗅覚野の脳活動に対して脳情報デコーディング解析を行ったところ、同じ匂いに対して2つの異なる言葉がラベルされた場合に、その活動の空間的なパターンが異なることが示された。このことから、同じ匂いであっても異なる言葉ラベルが与えられると一次嗅覚野の活動が変化することが示された。

一次嗅覚野と言葉や記憶の処理に関わる脳領域、連携・機能を示唆

最後に、一次嗅覚野の活動が言葉によって変化するメカニズムを探るために、一次嗅覚野と嗅覚野以外の脳領域について機能的結合解析を実施。その結果、一次嗅覚野と言葉や記憶の処理に関わる脳領域とが連携して機能していることが示唆された。

ヒトの「匂いの脳内情報処理」一端が明らかに

これらの研究成果によって、ヒトの匂いの脳内情報処理の一端が明らかになった。匂いの脳内情報伝達経路の中でも上流に位置する一次嗅覚野に言葉ラベルの影響があったことは、ヒトにおける匂いの脳内情報処理機構、ひいてはヒトがどのように世界を認識するのかを包括的に理解するための足がかりとなることが期待される。また、産業応用の面においては、今回用いられた脳活動から匂いの微細な違いを読み出す技術が、香料のもたらす印象を予測する技術への足がかりになることが期待される、と研究グループは述べている。

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