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脊髄損傷、患者の脂肪由来幹細胞が治療に役立つ可能性、P1試験で検証-米研究

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2024年04月11日 PM02:45

脊髄損傷の治療に患者の脂肪由来の幹細胞が役立つ可能性

患者自身の脂肪から採取した幹細胞を注射することで、脊髄損傷後の感覚や運動機能の改善を安全に導ける可能性のあることが、米メイヨー・クリニックの神経外科医であるMohamad Bydon氏らによる第1相臨床試験で示された。この幹細胞による治療を受けた患者では、針で刺されたり軽く触れたときの感覚が高まったほか、筋力や肛門括約筋のコントロールが向上したという。この研究の詳細は、「Nature Communications」4月1日号に掲載された。Bydon氏は、「脊髄損傷では、軽度の改善でも患者の生活の質(QOL)に大きな違いをもたらす可能性がある」と話している。


画像提供HealthDay

Bydon氏によると、幹細胞は炎症が見られる部位に移動する傾向があり、今回の研究で対象とされた患者の場合、それは脊髄損傷部位に当たる。しかし、幹細胞と脊髄との間の相互作用については明確になっていないという。

この研究でBydon氏らは、18~65歳の外傷性脊髄損傷患者10人(平均年齢34.6歳、男性8人)の腹部、または大腿部から少量の脂肪を採取した。これらの患者は、自動車事故や転倒などの外傷性事故によって首(6人)や背中(4人)を負傷していた。研究グループは、採取した脂肪由来の幹細胞を培養し、その数が1億個以上になるまで増殖させてから患者の下背部の脊椎にX線透視ガイド下で注射した。その上で、追跡調査を実施して、治療により痛覚や圧覚、その他の感覚に対する反応の変化や、MRI画像や脳脊髄液の変化について調べた。

その結果、10人の患者のうち7人で、深刻な副作用を伴うことなく、米国脊髄損傷協会(ASIA)機能障害尺度(AIS)による評価で改善が認められたという。その中には、損傷部位から下の感覚や動きが全くない状態からスタートした胸髄損傷患者3人のうちの2人が含まれており、それぞれが多少の感覚と運動コントロールを取り戻した。Bydon氏らの理解に基づくと、このような胸髄を完全損傷した患者で感覚や運動機能の回復が期待されるのはわずか5%であるという。また、MRI検査では10人中8人の患者で脊髄神経根の軽度の凝集と結節性濃染が認められ、脳脊髄液の分析では血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)レベルの上昇が認められた。

世界保健機関(WHO)によると、世界で脊髄損傷を負う人の数は年間25万~50万人と推定されている。患者の回復が見込めるのは通常、受傷後6カ月から1年の間までであり、受傷から1年や2年が経過すると回復は見込めなくなる。

Bydon氏は「長年、脊髄損傷に対する治療選択肢は、支持療法、具体的には固定術や理学療法に限定されてきた。昔から使われてきた教科書の多くでも、脊髄損傷は改善しないと記載されていた」と振り返る。その上で、「近年、医学界や科学界から、これまでの前提を覆すような知見が得られている」と話し、「今回の研究は、脊髄損傷患者の治療を改善するという最終的なゴールに向けた一歩となるものだ」と期待を示している。(HealthDay News 2024年3月29日)

▼外部リンク
Intrathecal delivery of adipose-derived mesenchymal stem cells in traumatic spinal cord injury: Phase I trial

HealthDay
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Photo Credit: Mayo Clinic
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