医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 日本人は栄養・食事情報を「幅広いメディアから得ている」ことを明らかに-東大

日本人は栄養・食事情報を「幅広いメディアから得ている」ことを明らかに-東大

読了時間:約 3分12秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年02月22日 AM09:00

20~79歳日本人5,998人対象、オンライン質問票調査で

東京大学は2月15日、20~79歳の日本人5,998人を対象としたオンライン質問票調査を行ない、日本人は幅広いメディアから栄養や食事についての情報を得ていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、同研究科栄養疫学・行動栄養学講座の篠崎奈々特任助教、同研究科医療コミュニケーション学分野の奥原剛准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JMIR Public Health and Surveillance」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

現在、栄養や食事に関する情報は、インターネットを含めて、さまざまなメディアを通じて容易に入手できる。しかし、一般の人々がどのような情報源から、栄養や食事に関する情報を入手しているかについては、ほとんど検討がなされていなかった。

そこで、今回の研究では、さまざまなメディア情報源からの食事・栄養に関する情報の探索行動を網羅的に調べた。同横断研究の対象は、2023年2~3月にオンライン質問紙調査に参加した20~79歳の日本人成人5,998人。どのメディアから栄養や食事についての情報を得ているかについては、まず、以下の質問に回答してもらった。「栄養や食事についての情報を得るときに、あなたが日常的に情報源として用いている媒体・メディアは以下のうちのどれですか?当てはまるものすべてをお選びください」次に、選択した媒体・メディアのそれぞれについて、「その情報源から得られた「栄養や食事についての情報」は信頼できると思いますか?」と尋ねた。選択肢は、「全くそう思わない」「あまりそう思わない」「どちらともいえない」「ややそう思う」「非常にそう思う」の5つで、「ややそう思う」もしくは「非常にそう思う」と答えた場合、その情報源を「栄養や食事についての情報源」とした。

多い順に、テレビ>ウェブ検索>特定のウェブサイト>新聞>本や雑誌>動画サイト

研究の結果、最も多くの人々に使用されていた情報源はテレビ(32.9%)だった。2番目以降は、ウェブ検索(22.2%)、特定のウェブサイト(例:政府や医療メーカー;16.6%)、新聞(15.0%)、本や雑誌(11.6%)、動画サイト(例:;10.6%)だった。

「高」ほど、6つの情報源すべての利用「高」

これら、10%以上の人々に使用されていた6つの情報源について、多変量ロジスティック回帰分析を用いて、関連する特性を調べた。どの情報源とも一貫した関連を示したのはヘルスリテラシーのみで、ヘルスリテラシーが高いほど、ここで取り上げた個々の情報源すべてにおいて利用する確率が高いことがわかった。

フードリテラシーと情報源の関連、情報源によってさまざま

一方、フードリテラシーと情報源との関連は、情報源によってさまざまであり、テレビの利用はフードリテラシーが低いことと関連している一方、特定のウェブサイト、本や雑誌、動画サイトの利用はフードリテラシーが高いことと関連していた。食事内容の質が高いことは、新聞および本や雑誌の利用と関連していた。

管理栄養士、一般の人より特定のウェブサイト・本や雑誌を利用の傾向

その他の特性に関しては、女性であることはテレビと本・雑誌の利用と関連し、男性であることは特定のウェブサイト、新聞、動画サイトの利用と関連していた。また、年齢は新聞の利用と正の関連があり、特定のウェブサイトや動画サイトの利用とは負の関連があった。高学歴者は、特定のウェブサイトや新聞を利用する傾向がある一方で、テレビや動画サイトを利用しない傾向にあった。さらに、管理栄養士は、一般の人々(栄養・健康関連以外の職業の人々)よりも特定のウェブサイト、本や雑誌を利用する傾向がある一方で、テレビや動画サイトを利用しない傾向にあった。

信頼できる栄養・食事情報をどのように発信するか、検討の科学的根拠として期待

今回の研究では、日本人成人を対象として、栄養や食事についての情報を求める際に日常的に利用されるさまざまな(オンラインおよびオフラインの)情報源があることが明らかになった。さらに、それぞれの情報源を使用するかどうかには(ヘルスリテラシーを除けば)異なる要因が関連していた。このことは、潜在的なユーザー、トピック、最適な情報普及戦略がそれぞれの情報源によって大きく異なることを示唆する。同研究において最も懸念される知見は、2つの主要な情報源(テレビとウェブ検索)の利用と、フードリテラシーおよび食事内容の質との間に正の関連が観察されなかったことだという。一方で、望ましい知見は、特定のウェブサイト、新聞、本や雑誌、動画サイトの利用が、フードリテラシーや食事内容の質と正の関連を示したことだとしている。いずれにしても、同研究は、一般の人々が栄養や食事に関する情報をさまざまなメディアから得ていることを明らかにした世界で初めての研究だ。同研究成果は、栄養や食事についての信頼できる情報を、社会に向けどのように発信・普及すればよいかを議論・検討するための科学的根拠となることが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか