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遺伝子異常にマッチしたがん治験参加率、病院までの移動時間増で低下-国がん

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2023年09月26日 AM10:27

プレシジョン・オンコロジーにおける移動負担の影響は明らかでなかった

国立がん研究センター中央病院は、病院までの移動時間によって、包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査後の遺伝子異常にマッチした治験参加率に差が出るという結果を発表した。この研究は、 先端医療科の上原悠治氏、小山隆文氏らの研究グループによるもの。研究結果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。

プレシジョン・オンコロジーの時代において、CGP検査後、遺伝子異常にマッチした治験に参加できるかどうかの重要性が増している。一方で、遺伝子異常にマッチした治験を行っている施設数は限られており、また、CGP検査を実施している施設からこれらの治験を実施している施設への紹介が必要であるため、治験参加のための患者の移動負担は大きい。しかし、移動時間や移動距離が遺伝子異常にマッチした治験への参加率に相関するかどうかは明らかではなかった。

研究グループは今回、病院(国立がん研究センター中央病院)までの移動時間または距離が、CGP検査後の遺伝子異常にマッチした治験参加率と相関するかどうかを評価する後ろ向きコホート研究を実施した。対象となったのは、CGP検査後に遺伝子異常にマッチした治験に参加するため同病院に日本全国の病院から紹介された進行性または転移性固形腫瘍患者。患者登録は2020年6月~2022年6月に、データ解析は2022年6~10月に行われた。主要アウトカムは遺伝子異常にマッチした治験への登録、副次アウトカムは全がん治験(遺伝子異常にマッチした治験と遺伝子異常にマッチしていない治験の合計)への登録とした。

全紹介患者の11%が遺伝子異常にマッチした治験に参加

患者1,127例(平均年齢62[範囲:16~85]歳、女性584[52%]例、全員日本在住)のうち、127例(11%)が遺伝子異常にマッチした治験、241例(21%)が全がん治験に参加した。全体集団における移動距離の中央値は38(四分位範囲[IQR]:21~107)km、移動時間の中央値は55(IQR:35~110)分であった。遺伝子異常にマッチした治験に参加した127例のうち、82例(65%)と45例(35%)がそれぞれ第1相試験と第2・3相試験に参加した。遺伝子異常にマッチした治験の多くは、単剤の分子標的薬であった(87/127例、69%)。

移動時間が遺伝子異常にマッチした治験の参加率と相関

研究グループは、23個の共変量を用いた多変量ロジスティック回帰分析を行った。移動距離(100km以上 vs. 100km未満)は遺伝子異常にマッチした治験の登録とは関連していなかった(26/310例[8%] vs. 101/807例[12%]、オッズ比[OR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.40~1.02)。一方、移動時間が120分以上の患者は120分未満より遺伝子異常にマッチした治験の参加率が有意に低かった(19/276例[7%] vs. 108/851例[13%]、OR:0.51、95%CI:0.29~0.84)。また、移動時間が40分未満(38/283例[13%])、40~120分(70/568例[12%])、120分以上(19/276例[7%])と長くなるにつれ、遺伝子異常にマッチした治験の参加率は低下した。全がん治験への参加率と、移動距離・時間の間には有意な相関関係は見られなかった。

今回の結果について、論文筆頭著者の上原氏は「今回の研究では、移動時間が増加すると遺伝子異常にマッチした治験の参加率が減少する可能性が示された。近年、世界的に治験に関する格差や多様性の確保が注目されている。本試験は、日本のがんゲノム医療とプレシジョン・オンコロジーにおける地域格差をデータとして示し、デジタルプラットフォームなどを用いて自宅や近隣の医療機関で行う分散型治験(Decentralized Clinical Trials [DCT])を進める上でのエビデンスとして重要になるものだ」と、述べている。

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