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フレイル指数のCFSとFIラボは異なる側面を評価、併用が有用な可能性-名大

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2023年08月02日 AM10:52

機能評価に基づくCFS、血液検査結果から算出のFIラボ

名古屋大学は7月27日、臨床フレイルスケール(CFS:Clinical Frailty Scale)とFIラボ(FI-lab:Frailty Index-laboratory)の2つのフレイル指数が、フレイルの異なる側面を評価している可能性について検討した結果を発表した。この研究は、同大医学部附属病院老年内科の中嶋宏貴講師、梅垣宏行教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Aging Clinical and Experimental Research」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

世界的な高齢化の進行とともに、フレイル高齢者が増えている。このようなフレイルな高齢者は転倒・骨折や入院などの健康障害を認めやすく、死亡割合が高くなる。しかし、早期に発見し適切に介入すればフレイルの一部は可逆的で予防可能であることもわかってきており、近年注目されている。

フレイルの評価方法はさまざまに提案されており、広く用いられている方法としてCFSがある。これは、日常生活動作などの機能の評価に基づき、フレイル度を1~9までの9段階で評価する方法だ(9が最も重症)。また、比較的新しい方法として、検査結果からフレイル度を算出するFIラボが存在する。基本的には血液検査結果を用いており、検査した項目数のうち、基準範囲外の項目がいくつあるかを計算し、0~1の間の値が算出される(値が大きいほど重度のフレイル)。これらのフレイル指数の成り立ちを考えると、それぞれはフレイルの異なる側面を評価している可能性がある。

入院患者378人対象、CFS・FIラボと関連の臨床情報を検討

そこで研究グループは今回、名古屋大学医学部附属病院老年内科に入院する患者を登録する研究(J-HAC研究)のデータを用いて、CFSやFIラボがどのような臨床情報と関係するのかなどを検討した。今回の研究では患者378人を対象とした。FIラボは、一般的な血液検査23項目を用いて算出した。

CFSとFIラボはそれぞれ独立して臨床的な転帰と関連、併用での評価が良い

解析の結果、CFSは日常生活動作や認知機能と強い相関があること、一方で、FIラボはこれらの要素とは弱い相関しか認めないことが明らかになった。また、CFSもFIラボも、老年症候群や併存疾患とは弱い相関しか見られなかった。CFSとFIラボの2つのフレイル指標同士の相関は弱いものだった(相関係数r=0.28, p<0.001)。CFSとFIラボはそれぞれ独立して、入院中の死亡や入院してから90日以内の死亡、自宅への退院可否や入院期間などの臨床的な転帰と関連していた(例:入院中死亡のリスクは、CFSは1点あたり1.5倍、p=0.017、FIラボは0.1点あたり1.91倍、p<0.001)。これらの研究結果から、CFSとFIラボはそれぞれフレイルの異なる側面を評価していることが示唆された。

また、死亡や入院期間などの臨床的な転帰を予測する際には、CFSとFIラボのうちどちらか一方を用いるよりも、両方を同時に用いる場合に性能が良いことも判明。これらの2つのフレイル指標を同時に用いる場合、重みづけなど複雑な計算で得た合計値を用いても、単純に2つの指標の平均値を用いても、性能に差はなかった。

複数のフレイル指標の組み合わせ、臨床応用開発に期待

CFSとFIラボはどちらも評価が簡単であり、特に、FIラボについては仕組みさえ作れば自動化も容易だ。入院時や健診などでこれらのフレイル指標を活用することで、リスクに応じた介入を行いやすくなる可能性がある。今後は、CFSとFIラボなど、複数のフレイル指標を組み合わせた研究や臨床応用の開発が進められることが期待される、と研究グループは述べている。

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