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急性期脳卒中、サルコペニアと嚥下障害との関連を解明-国循

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2023年07月19日 AM09:44

回復期にサルコペニアは摂食嚥下予後への影響あり、急性期では?

国立循環器病研究センターは7月13日、急性期脳卒中におけるサルコペニアと摂食嚥下障害との関連を解明したと発表した。この研究は、同研究センター脳神経内科の猪原匡史部長、脳神経内科の福間一樹医師、猪原匡史部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical nutrition」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

サルコペニアと摂食嚥下障害は、脳卒中後患者を含めた高齢者の予後や生活の質の低下に影響しうる重要な問題となっている。近年、サルコペニアによる摂食嚥下障害に注目が集まり、回復期リハビリテーションを受ける患者におけるサルコペニアの摂食嚥下予後への影響が報告されてきた。しかし、脳卒中急性期におけるサルコペニアと摂食嚥下予後との関連は明らかにされていなかった。

急性期脳卒中患者350例、サルコペニア群と対照群で摂食嚥下機能など比較

今回の研究では、国立循環器病研究センター脳卒中ケアユニットで診療体制を整備し、2020~2022年にかけて入院早期に低栄養、、摂食嚥下障害のスクリーニングを行った60歳以上の急性期脳卒中患者350例を登録。アジアのサルコペニア診断基準(Asian Working Group for Sarcopenia 2019)に基づき、健側(麻痺がない側)の握力と下腿周囲長、生体インピーダンス法による骨格筋量指数を計測する判定スキームでサルコペニアを診断した。サルコペニア罹患群とサルコペニアを否定した対照群に分類し、摂食嚥下機能、経口摂取レベル、誤嚥性肺炎の合併を比較した。

サルコペニア、入院7・14日後経口摂取レベル不良などと有意に関連

研究の結果、登録患者のうち、119例(34%)にサルコペニアを認め、その66%が低栄養を伴っていた。サルコペニア罹患群は、対照群と比較して、摂食嚥下関連筋の1つである舌筋の筋力(舌圧)が低く、嚥下スクリーニングテスト(改訂水飲みテストスコア)の結果が不良だった(オッズ比0.51, p=0.042)。また、サルコペニアが入院7日後(オッズ比4.72, p=0.002)、入院14日後(オッズ比 3.93, p=0.006)の経口摂取レベル不良(Functional Oral Intake Scale<5)、入院中の誤嚥性肺炎合併(調整後オッズ比6.12, p=0.007)と有意な関連を示すことを明らかにした。

低栄養・サルコペニア・摂食嚥下障害を包括した脳卒中管理発展に期待

同研究結果から、研究に登録した高齢脳卒中患者のサルコペニア罹患率は34%であり、サルコペニア罹患群は低栄養の併存率が高いことから栄養介入の必要性が示唆される。さらに、サルコペニアは摂食嚥下障害と誤嚥性肺炎のリスクであり、急性期の早期診断・栄養介入・誤嚥予防が求められることが示された。同研究で得られた知見に基づいた低栄養・サルコペニア・摂食嚥下障害を包括した脳卒中管理の発展が期待される、と研究グループは述べている。

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