医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 移動手段が「乗るだけ」の高齢者は、3年後のIADL低下リスクが高くなる-IHEPほか

移動手段が「乗るだけ」の高齢者は、3年後のIADL低下リスクが高くなる-IHEPほか

読了時間:約 2分4秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年04月12日 AM11:02

移動手段の選択が手段的日常生活動作に及ぼす影響は不明

(IHEP)は4月11日、愛知県豊明市在住の要介護認定を受けていない65歳以上の住民を3年間追跡した結果、高齢者の日常生活における移動の性質が「能動的」か「受動的」かという選択が、手段的日常生活機能動作レベルの変化と関連があることが明らかになったと発表した。この研究は、同機構研究部の服部真治氏、愛知県豊明市、NTTデータ経営研究所の研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、高齢者の身体的健康と外出活動との間の関連を示す研究が増加している。加えて、自治体による高齢者の活動支援関連施策の整備が進んでいる。先行研究では、外出頻度と機能的健康状態との関連を示す報告があるが、移動手段の選択が手段的日常生活動作(: instrumental activities of daily living)に及ぼす影響については報告されてこなかった。

三者は共同研究協定に基づき、「多様なサービス・資源による自立支援・介護予防効果の研究〜豊明市における介護予防・日常生活支援総合事業等の効果分析〜」に取り組んでいる。その一環として、研究では高齢者における移動手段の選択とIADL低下リスクとの関連評価を行った。

歩く・自ら運転する「能動的」か、乗るだけの「受動的」かで比較

今回の研究では、豊明市在住の要介護認定を受けていない65歳以上全員を対象に実施された住民健康実態調査(介護予防・日常生活圏域ニーズ調査)の2016年と2019年分の調査結果を分析に使用。さらに、要介護認定情報および被保険者情報を結合し、要支援・要介護認定者を特定したデータを作成し、分析を行った。

「移動手段の選択」による比較を行うため、徒歩や車(自ら運転)のような動作や操作を伴う「能動的移動手段」、および専ら乗車だけで移動が完了する「受動的移動手段」に分け、両グループ間の属性が対称に近づくように傾向スコアマッチングを行った。能動的移動手段を基準にした受動的移動手による3年後の手段的自立の低下リスクをポアソン回帰分析によってリスク比として評価した。

受動的移動手段の高齢者、能動的移動手段の人に比べIADL低下リスクが1.93倍高い

その結果、能動的移動手段は6,280人(76.2%)、受動的手段は1,865人(22.6%)であった。3年間でIADLが低下した人は999人(12.1%)であった。結果、「受動的移動手段」は「能動的移動手段」よりもIADL低下リスクが高く、リスク比は1.93(95%信頼区間1.62, 2.30)と有意に高かった。

能動的移動手段を維持するための自治体等での施策が介護予防に有効な可能性

高齢者が受動的移動手段を選択することは、3年後の手段的自立低下リスクと関連がある可能性が示された。「高齢者が日常生活¬¬で移動する際には、徒歩や自らの操作等を含む「能動的移動手段」を維持するための施策が、介護予防に有効かもしれない。自治体などの移動支援施策において、高齢者が能動的な交通手段を利用する機会や環境を地域社会に増やすことは、高齢者の社会的自立生活を促すのに有効である可能性がある」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 小児COVID-19、罹患後症状の発生率やリスク要因を明らかに-NCGMほか
  • CDK4/6阻害薬と顎骨壊死との関連を解明、医療ビッグデータで-岐阜薬科大ほか
  • 急性骨髄性白血病の正確な予後予測につながる遺伝子異常を発見-京大ほか
  • うつ病患者、「超低周波変動・超微弱磁場環境治療」で抑うつ症状が改善-名大
  • 食後インスリン分泌に「野菜を噛んで食べること」が影響する機序解明-早大ほか