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大腸がん浸潤先進部の増殖能・浸潤能・免疫寛容に関与する新たな仕組み解明-名大ほか

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2023年01月23日 AM11:30

がん浸潤先進部で進展を助ける細胞とクロストークする遺伝子を探し、新規治療標的を探索

名古屋大学は1月19日、アジア人大腸がん患者のシングルセルRNAシークエンスと空間トランスクリプトーム解析を用いて統合解析を実施し、HLA-Gを介したSPP1+マクロファージの誘導という大腸がん浸潤先進部の大腸がんの増殖能・浸潤能・免疫寛容に関与する新たな仕組みを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科システム生物学分野の島村徹平教授、小嶋泰弘前特任講師(現在は東京医科歯科大学難治疾患研究所に所属)、九州大学別府病院外科の三森功士教授、九州大学大学院医学系学府博士課程の大里祐樹の研究グループによるもの。研究成果は、「Cell Reports」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

大腸がんは、日本において罹患数、致死数ともに多く予後不良な疾患となっている。免疫チェックポイント阻害剤をはじめとして、新たな革新的技術も実装化されてきてはいるが、さらなる予後改善のためには、大腸がんの進化機構や免疫寛容獲得の機序への理解をさらに深化することが求められている。

研究グループでは、先行する進行大腸がんの一腫瘍多領域検体解析(MRA1)により、腫瘍内の全領域に共通して存在するクローナルな変異が存在し、そこに各ブロック固有の、いわゆるサブクローナル変異が存在してゲノム変異の多様性は形成され、難治性を呈することを明らかにした。また、前がん病変および早期大腸がんにおいても同様のMRAアプローチを用いて、がんの早期の段階ではさまざまなドライバー変異自身が多様性を形成するものの、強力なドライバー変異が選択され進行がんへと進展することを示し、新たながんの進化のモデルを示した。

しかし、どちらの研究においても腫瘍細胞自身のDNAの変化の解明を進めてきたが、がん微小環境の反応に関しては、その解明が不十分なままとなっていた。近年、シングルセルRNAシークエンスと空間トランスクリプトーム解析の発展により、組織を構成する個々の細胞に対する遺伝子発現レベルの定量化や、1細胞レベルでの遺伝子発現量の解析や、組織内における転写産物の空間分布を網羅的に把握することが可能になりつつあり、両者を統合解析することによって、浸潤先進部といった空間的なコンテキストと紐づけて、大腸がんの腫瘍内不均一性を1細胞レベルで明らかにすることが可能となった。このような統合的なアプローチにより、今回は浸潤先進部がん細胞の進展を助ける細胞とクロストークする遺伝子を探索することで新たな治療標的細胞/分子を探索した。

大腸がん浸潤先進部と共局在している細胞が「SPP1+」であると判明

研究では、Publicのアジア人大腸がん患者(23人)のシングルセルRNAシークエンスデータとアジア人大腸がん患者(1人)の空間トランスクリプトームデータを用いて、統合解析を実施した。

まず、Publicのアジア人大腸がん患者(23人)のシングルセルRNAシークエンスデータを用いて次元圧縮を実施。その結果、上皮細胞は14個のクラスターに分類された。この14種のクラスターのうち、大腸がん浸潤先進部に局在するクラスター5、クラスター7の2種類に注目。すると、これらの大腸がん浸潤先進部と「共局在」している細胞が「SPP1+マクロファージ」であることが判明した。

浸潤先進部のSPP1+マクロファージは同細胞をさらに誘引し、CD8の細胞障害性低下等を起こす

ここで、腫瘍の悪性度と関連が指摘されているSPP1+マクロファージを中心とした細胞間コミュニケーションに着目した解析を行ったところ、大腸がん浸潤先進部の大腸がん細胞から分泌されるHLA-GによりSPP1+マクロファージが生産され、SPP1+マクロファージはさらなるSPP1+マクロファージを誘引/CD8の細胞障害性の低下/大腸がん細胞の増殖能・浸潤能の亢進等をしていることが示された。

また、これらの解析結果について、大腸がん検体20例に対して免疫組織化学染色を施行することによって、その再現性を確認した。さらに、マウスの大腸がん細胞におけるHLA-Gノックアウトにより、マウスの皮下移植腫瘍の増殖能低下とSPP1+マクロファージ局所集積の回避を確認した。

新規免疫チェックポイント阻害剤を基盤とする免疫療法への発展に期待

SPP1+マクロファージはM2マクロファージと同義で、第2の免疫チェックポイントと呼ばれ、免疫療法における新たな治療標的として注目されている。同研究で明らかにされたHLA-Gは第2の免疫チェックポイントを制御する上で重要な役割を担う分子として期待される。

「大腸がんでは免疫チェックポイント阻害剤に対する適応としてMSI-H大腸がんが知られており実装化されているが、本研究成果により、症例数の多いMSS大腸がんに対する新たな治療アプローチになる可能性が示唆された」と、研究グループは述べている。

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