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腸における栄養吸収の可視化に成功、モデル生物で-東北大

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2022年09月26日 AM10:21

腸内における栄養の取り込みと流動の関係は明らかにされていなかった

東北大学は9月21日、モデル生物である線虫(C. elegans)を用いて、排便モータープログラム()による腸内の流動と腸壁からのグルコース吸収について、流体力学ではよく知られた「Taylor分散」によって腸内で栄養物質が撹拌され、腸壁での栄養吸収を助長していることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科の鈴木雄貴博士(研究当時、後期博士課程在籍)、菊地謙次准教授、同大大学院医工学研究科の沼山恵子准教授、石川拓司教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脊索動物や脊椎動物、軟体動物や線形動物など数多くの動物は外部からエサを捕食し、腸で消化吸収することで栄養を獲得する消化器官を有している。腸での食物消化は、周期的な筋肉の収縮と弛緩をする腸の蠕動運動によって輸送されつつ、蠕動による流れの中で物理・化学的に分解される。その後、腸上皮において吸収され、不要物は肛門から排出される。腸内において蠕動が活発な場合、腸内の流動が速く、また腸の表面積が大きい場合には、・ビタミン・ミネラルなどの栄養素の吸収が促進され、反対に腸内の流動物の粘度が高く、腸内の流動が遅い場合には、グルコーストランスポーターによるグルコースの取り込みやインスリン分泌が減少することが生理学的に知られている。

しかし、腸内における栄養の取り込みと腸内の流動の関係は、生理的・薬理学的に重要であるにもかかわらず、腸の蠕動と腸内の流れの計測と栄養吸収を直接観察することが困難であったため、詳細な力学的メカニズムはこれまで明らかにされていなかった。

蛍光色素で標識したグルコースを用いて、腸における栄養吸収の可視化に成功

研究グループは今回、動物の消化器官の基本構造を有する線虫C. elegansを用いて、腸内における栄養吸収と腸の蠕動による腸内流動との関係について、これまでの生理学的な知見に流体力学的観点を併せて、腸内の流動が関与する新たな栄養吸収メカニズムを発見した。さらに、細胞内活動の主要なエネルギー源として重要な役割を持つグルコースの吸収に着目し、動物の腸細胞上におけるグルコーストランスポーターによるグルコースの細胞内への輸送について、細胞・組織スケールの可視化計測法を構築し、腸におけるグルコース吸収の時系列計測を行った。

具体的には、蛍光色素で標識したグルコースを用いて大腸菌を培養し、大腸菌内に蛍光グルコースを包含させた蛍光大腸菌を作成し、その大腸菌をエサとして線虫に与えることで、腸における栄養(グルコース)吸収の可視化実験を行った。捕食開始後、蛍光大腸菌が口部で咀嚼され、破砕された大腸菌内部の蛍光グルコースが咽頭部より腸へと輸送され、腸内において蛍光グルコースが徐々に蓄積する様子を生きたまま可視化するライブイメージングに成功した。

Taylor分散により線虫腸内でグルコースが撹拌され、腸壁でのグルコース吸収を助長

さらに、腸の活性が通常と不活性の時、また、便秘の時の腸における糖質の吸収を比較するため、野生株および3種類のDMP欠損突然変異株(unc-16: aBoc欠損株, egl-8: pBoc欠損株, exp-1: E.p.欠損株)の線虫を用いて腸におけるグルコース吸収の計測と腸内の流速計測を行い、腸内の流動と腸壁からのグルコース吸収について実験的調査を行った。

その結果、エサの摂取量には株によらず差は見られなかったものの、それぞれの変異株では野生株よりもグルコース吸収が著しく低下しており、またDMPよって生じた順行性および逆行性の蠕動運動による腸内の流速も、変異株は野生株よりも減少していた。これにより、腸内の流動がグルコース吸収量に大きく寄与することが示唆された。

また、流体力学に基づく腸内のグルコースの輸送と腸壁における吸収について理論解析を行った結果、流体力学ではよく知られたTaylor分散によって腸内でグルコースが撹拌され、腸壁でのグルコース吸収を助長していることを発見した。

腸の活性・疾患や腸内細菌に関係する栄養吸収メカニズムの解明に期待

今回の研究は、腸における栄養吸収や腸内環境の変化について、生理学的・薬理学的知見に加え、新たに力学的な見解に基づく栄養吸収メカニズムの可能性を示唆するものと言える。

「腸の活性・疾患、腸内細菌に関係する肥満や糖尿病などにおける栄養吸収や消化、腸内における物質代謝など未知の生理現象について、力学的知見に基づくメカニズムの解明に貢献すると考えられる」と、研究グループは述べている。

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