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風疹の定期予防接種制度の男性対象調査、利用率低迷の背景を明らかに-筑波大ほか

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2021年02月09日 PM12:15

2019年度終了時点で予防接種クーポンの利用率は21.2%

筑波大学は2月8日、風疹の定期接種制度の利用率向上に向けたインターネットによる質問票調査を行い、その結果を発表した。これは同大医学医療系国際社会医学研究室の堀愛助教、国際医療福祉大学大学院の和田耕治教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載されている。


画像はリリースより

風疹はワクチンで防げる感染症である。しかし、日本では、子どもの頃に予防接種を受ける機会がなかった成人男性を中心とした流行が、現在も周期的に起きている。妊婦が感染すると、赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が生じることがあり、「)」と呼ばれる。

政府は、2020年までに風疹を排除する目標を2014年の特定感染症予防指針で掲げたが、いまだに達成されていない。風疹を排除するには、小児に風疹含有ワクチンの定期接種を行うとともに、抗体価が低い成人世代にワクチンを接種する、いわゆる「スピードアップキャンペーン」の組み合わせが有効であるとして、その実施を世界保健機関(WHO)は推奨している。

日本では2019年度より、1962年度から78年度生まれの成人男性約1500万人を対象とした風疹の第5期定期接種制度が始まった。初年度は1972~78年度生まれの男性646万人に対して、無料の抗体検査と、抗体価が十分でない場合(HI法で8IU/ml未満)にワクチン接種を受けられる定期接種クーポン券が、居住する自治体から自宅に郵送された。2020年度以降、1962~1971年度生まれの男性に対してもクーポン券が順次発送されている。

この制度により、政府は対象世代の男性の抗体保有割合を、2018年時点の80%から、最終的に90%まで高めることが目標としている。制度は21年度で終了予定だったが、新型コロナウイルス感染症流行の影響で期間が延長されている。しかし、2019年度終了時点で、対象者の21.2%しかこのクーポン券を利用しなかったことが国の集計で判明し、制度の利用率の低迷が問題となっている。そこで研究グループは、2019年度の風疹定期接種の対象者である1972~78年度生まれ(41~47歳)の男性を対象に、定期接種制度の利用と関連する要因を調査した。

政府の勧奨を知っていることが、定期接種クーポン券の受け取りと抗体検査の実施の両方に関連

研究グループは2020年3月、インターネットによる質問票調査を実施した。2018~19年の風疹流行地域7都府県(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、福岡)に在住する41~47歳の男性1万1,754人をインターネット調査会社インテージの登録者から無作為抽出して調査を依頼し、有効回答数が約1,600人に到達した時点で調査終了とした。質問項目は属性、社会経済要因のほか、風疹に対する認識、定期接種制度の利用の有無であった。

回答が得られた41~47歳男性1,680人のうち、「自治体から風疹のクーポン券を2019年2月以降に受け取った」と回答した人は約半分の51%(862人)、抗体検査を受けた人はさらに半分の26%(435人)、そして抗体検査の結果、予防接種を受けた人は6%(101人)だった。また、「政府は、あなたの年齢層の男性に風疹の予防接種を勧めていることを知っていた」と回答した人は57%だった。なお、抗体検査の結果、予防接種が必要と判定された104人のうち94人(90%)は調査時点で、今回の制度を利用して予防接種を済ませていた。

また、「政府の勧奨を知っている」ことが、定期接種クーポン券の受け取りと抗体検査の実施との両方に、最も強く関連していることがわかった。しかし、政府の勧奨を知っている人は57%と、まだ十分に情報が行き渡っているとはいえず、さらなる周知が必要と考えられる。今後の制度利用促進につながる知見としては、「自分達の年齢層の男性は、子どもの頃に風疹の予防接種を行う機会がなかったことを知っている」、そして「これまでに風疹の予防接種を受けたかどうかについて母子手帳などの記録物を確認することができる」といった項目が、定期接種制度の利用と関連していることがわかった。一方、今回の調査で、先天性風疹症候群についての知識は、定期接種クーポン券利用との有意な関連は見られなかったという。

「自分ごと」と認識してもらい、職場やSNSなどを通じて同世代に広く呼びかけを

今回の調査から、成人男性に対し、風疹の定期接種は「誰かのため」ではなく、自分自身の感染症予防に利益をもたらす「自分ごと」として認識してもらう働きかけが重要であると考えられた。さらに、抗体検査を受けた知り合いがいると定期接種クーポン券の利用も多かったことから、クーポン券の利用を、職場やソーシャルネットワークサービスなどで同世代の仲間に広く呼びかけてもらう手段が、制度利用促進に大変有効であると考えられるという。

「2月4日は風疹の日だった。成人男性に風疹の定期接種制度を知ってもらうこと、制度を知り合いに広めてもらうこと、職場の健康診断などで誰でも抗体検査を受けやすくすることで、利用率向上につながる可能性がある」と、研究グループは述べている。

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