医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > アジア人のSLE発症に関わる遺伝子座を大規模GWASで複数同定-理研ほか

アジア人のSLE発症に関わる遺伝子座を大規模GWASで複数同定-理研ほか

読了時間:約 3分25秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年02月03日 PM12:00

若年者に好発のSLE、ステロイド以外の治療薬開発が課題

(理研)は2月1日、日本・中国・韓国からなる20万人以上のアジア人集団の遺伝情報を用いて大規模なゲノムワイド関連解析()を行い、(SLE)の発症に関わる疾患感受性領域(遺伝子座)を新たに46か所同定したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの末次弘征大学院生リサーチ・アソシエイト(九州大学大学院医学系学府医学専攻博士課程)、池川志郎チームリーダー、ゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー、福岡大学医学部整形外科学教室の山本卓明教授らの共同研究グループを中心とする特発性大腿骨頭壊死症調査研究班によるもの。研究成果は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に掲載されている。


画像はリリースより

SLEは、何らかの原因により自己抗体が産生され、皮膚・関節・脳・腎臓・肺・血管をはじめとする全身の臓器が障害され、多彩な臨床症状を呈する疾患。2014年度の厚生労働省における特定疾患医療費受療患者数は約6万人だが、実際の患者数はさらに多いと推測されている。ステロイド薬の登場により、20年生存率は50~70%とされているが、20~40代の若年者に好発することを考慮するとまだ十分とはいえない。また、ステロイドをはじめとした投薬により、糖尿病、感染症、浮腫や白内障などの合併症も生じるため、病態の解明および患者それぞれに対応した治療薬の開発が喫緊の課題となっている。

「アジア人」の若年者に好発のため、アジア人でのゲノム解析を実施

これまでにSLEを対象としたゲノム研究が複数行われており、SLEに関連する疾患感受性領域(遺伝子座)は111か所同定されていた。しかし、SLEはアジア人の若年者に好発するにもかかわらず、ゲノム研究の多くはヨーロッパ人を対象としたものだった。アジア人とヨーロッパ人には遺伝的背景に違いがあることが示唆されており、これまでアジア人特有の遺伝子座の同定は不十分だった。

そこで今回、研究グループは、中国・韓国の研究グループと協力し、アジア人集団(におけるSLEの大規模GWASのメタ解析を実施した。

SLE発症関連遺伝子座を113同定、46は新規で2つはアジア人特有

研究グループはまず、新たに収集したSLE患者1,177人に対し、バイオバンクジャパンの14万256人を対照群として、大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。このGWASの結果に、過去に報告されていた国内の2つのSLE GWASの結果を統合し、メタ解析を実施した(SLE患者2,535人、対照群14万5777人)。そして、このメタ解析の結果に、中国・韓国のSLE研究グループが行ったSLE GWASの結果を統合し、アジア人集団における大規模なSLE GWASメタ解析を行った(SLE患者1万3377人、対照群19万4993人)。その結果、SLE発症に関わる遺伝子座を113か所同定し、そのうち46か所は新しい遺伝子座だった。さらに、それらの遺伝子座内の遺伝子バリアントについてアジア人とヨーロッパ人のアレル頻度を比較することで、アジア人特有のSLE関連遺伝子座を2か所(LEF、GTF2H1)同定した。

既報4遺伝子座と新規6遺伝子座に、高率でSLE発症のSNPを同定

同定された113か所の遺伝子座からHLA領域を除き、各遺伝子座の代表的な一塩基多型(SNP)についてコンディショナル解析を行ったところ、169個の独立したSNPがSLEの発症に関連していることが明らかになった。そこで、各遺伝子座における真の原因SNPを推定するためにファインマッピングを実施。その結果、過去に報告されていた4つの遺伝子座(ATXN2、BACH2、DRAM1/WASHC3、NCF2)と6つの新規遺伝子座(ACAP1、ELF3、GTF2H1、LRRK1、LOC102724596/PHB、STIM1)においては、80%以上の確率でSLE発症の原因となっているSNPがそれぞれ同定された。

SLEとループス腎炎は共通した機序で発症の可能性

次に、SLEと共通する遺伝的背景を持つ疾患や形質を明らかにするために、ビッグ・データを用いた遺伝統計学的解析を実施。その結果、過去の報告と同様に、SLEの発症は関節リウマチやバセドウ病の発症と正の相関関係を認めた。また、今回新たにアルブミン/グロブリン比と負の相関を、非アルブミンタンパク質と正の相関を認めた。この結果から、SLE患者で産生される自己抗体が直接腎臓にダメージを与えるという因果関係のみならず、SLEの発症とループス腎炎が共通の遺伝的背景、すなわち共通した機序でSLEとループス腎炎を発症する可能性があることが示された。

アジア人も含めた、さらなる解析で病態解明へ

今回の研究により、SLEの発症に関連する遺伝子座が46か所同定された。これは、SLEがさまざまな遺伝子が関わる多因子遺伝病であることを改めて示すものであり、まだ見つかっていない関連遺伝子が数多く存在することを示唆している。今後、これらの遺伝子座から原因遺伝子を同定することで、SLEのさまざまな病態が明らかになり、詳細な診断基準の確立や各患者に対応した治療薬の開発につながることが期待できる。

また、アジア人特有のSLE関連遺伝子座が2か所同定された。これは、アジア人とヨーロッパ人では一部、SLEの病態が異なることを示しており、SLEの病態を解明するには、ヨーロッパ人のみならず、アジア人を対象とした研究も重要であることが明らかになった。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 慢性腰痛患者の歩行時の体幹制御は日常生活環境に依存する-畿央大
  • 【IASR速報】ダニ媒介性発熱性感染症SFTS、関東地方初の症例報告-感染研
  • 新たな免疫不全症「AIOLOS異常症」を同定-東京医歯大ほか
  • 外耳道由来の経皮ガスが、揮発性有機化合物の連続計測に有用と判明-東京医歯大ほか
  • 結核の高度まん延国ほどCOVID-19死亡率および発症率が低い傾向-帝京大ほか