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エンパグリフロジン、左室駆出率低下の心不全対象P3試験結果を発表-独ベーリンガーと米リリー

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2020年09月15日 AM11:30

1日1回経口投与のSGLT2阻害薬、心血管死減少に寄与する可能性

独ベーリンガーインゲルハイムと米イーライリリー・アンド・カンパニーは8月29日、(製品名:(R))について、2型糖尿病合併の有無を問わない左室駆出率が低下した心不全患者対象の第3相臨床試験EMPEROR-Reduced試験の結果が、2020年欧州心臓病学会(ESC)の年次総会で報告され、「The New England Journal of Medicine」に掲載されたことを発表した。

エンパグリフロジンは、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬。心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された、初めての2型糖尿病治療薬だ。

血糖値が高い2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを投与し、SGLT2を阻害することで、過剰な糖を尿中に排出させる。さらに、塩分(ナトリウム)を体外に排出させ、循環血漿量を低下させる。エンパグリフロジンによる体内の糖・塩分・水の代謝変化が、EMPA-REG OUTCOME(R)試験で確認された心血管死の減少に寄与する可能性が示唆されている。

心血管死または心不全による入院までの期間の相対リスク25%減少

EMPEROR-Reduced試験では、左室駆出率が低下した慢性心不全患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性を評価した。主要評価項目は、判定された心血管死または心不全による入院の初回発現までの時間。患者数は3,730人、試験完了は2020年としている。同試験では、標準治療にエンパグリフロジン(10mg)を上乗せした場合の効果をプラセボと比較し、評価した。

同試験の結果、エンパグリフロジンは主要評価項目である心血管死または心不全による入院までの期間の相対リスクを25%有意に減少させた。主要評価項目の結果は、2型糖尿病合併の有無を問わず、サブグループ間で一貫していた。また、重要な副次評価項目の解析から、エンパグリフロジンは心不全による入院の初発および再発の相対リスクを30%低下させることが明らかになった。さらに、腎機能低下の指標であるeGFRの低下率は、プラセボ投与群に比べてエンパグリフロジン投与群で緩やかだったとしている。

探索的解析によると、EMPEROR-Reduced試験の主要評価項目における絶対リスクの低下は、1件の心血管死または心不全による入院の予防に対して、16か月間における治療必要数19人に相当した。また、エンパグリフロジン投与により、末期腎不全や重大な腎機能低下などからなる腎複合評価項目の相対リスクが50%低下することも明らかとなった。

EMPEROR-Reduced試験におけるこれらの有効性に関する結果は、10㎎の1日1回投与という、漸増を必要としない簡便な投与法で達成された。安全性プロファイルは、エンパグリフロジンを用いたこれまでの試験と同様であり、循環血液量減少、低血圧、体液量減少、腎不全、、低血糖イベントなどの有害事象に関し、プラセボと比較して臨床的に意義のある差は認められなかったとしている。

2型糖尿病合併の有無を問わない慢性腎臓病患者における腎臓病の進行・心血管死に対する評価も

(FDA)は、慢性心不全患者における心血管死および心不全による入院のリスク低下に関し、エンパグリフロジンをファストトラック審査の対象に指定。この指定は、EMPEROR-Reduced試験とEMPEROR-Preserved試験から構成される進行中のEMPERORプログラムが対象だ。EMPEROR-Preserved試験では、これまでに承認された治療法のない左室駆出率が保持された心不全患者を対象に、心血管死または心不全による入院に対するエンパグリフロジンの効果を評価する。EMPEROR-Preserved試験の結果は、2021年に発表される予定だ。

また、進行中のEMPA-KIDNEY試験では、2型糖尿病合併の有無を問わない慢性腎臓病患者における腎臓病の進行および心血管死に対するエンパグリフロジンの有効性を評価する。FDAは、慢性腎臓病の治療薬として、エンパグリフロジンをファストトラック審査の対象に指定している。EMPA-KIDNEY試験の結果は、2022年に発表される予定だ。(QLifePro編集部)

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