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モガムリズマブ抵抗性のATLリンパ節病変にブロモドメイン阻害剤が有用な可能性-名大

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2020年08月05日 PM12:30

モガムリズマブは血中ATLには効果が高いがリンパ節ATLには効きづらい

名古屋大学は8月4日、(ATL)におけるリンパ節病変の形成にHGF/c-Metシグナルが重要な役割を果たし、これらの病変に対してエピゲノム治療薬であるブロモドメイン阻害薬が有用である可能性を見出したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科腫瘍生物学分野の近藤豊教授の研究グループが、同医学研究科の飯田真介教授、戸谷治仁研究員らとの共同研究として行ったもの。研究成果は、「Oncogene」に掲載されている。


画像はリリースより

ATLは進行が速く、難治性の経過を辿る造血器腫瘍の一つ。病変は多岐にわたり、診断時には約9割の症例でリンパ節や臓器浸潤など、血液中以外にも病変を認める。近年、従来の抗がん剤に加えて、ATL細胞に発現するCCR4タンパク質を標的としたモガムリズマブが標準治療として組み込まれるようになり、治療成績の改善が得られてきている。しかし、血液中のATLにはよく効果が得られているものの、リンパ節などの非血液中のATL病変では効果が十分でなく、予後に影響することが知られている。これらの治療抵抗性病変形成のメカニズムは明らかでなく、新たな治療アプローチが求められている。今回、研究グループは、リンパ節と血液中のATL細胞のサイトカイン・増殖成長因子の発現比較解析を行い、腫瘤病変の形成に関わる遺伝子の発現制御メカニズムと、それを標的とする治療薬の有用性を検討した。

血中とリンパ節のATL細胞を比較、HGFがリンパ節病変の形成に重要と判明

リンパ節由来ATL細胞株と血液由来ATL細胞株のタンパク質アレイ解析を実施した結果、リンパ節由来細胞株で発現が高く、かつオートクラインに作用する因子としてHGFが抽出された。これまでにいくつかのがん腫において、HGF/c-Met経路が腫瘍増殖や転移に関与することや、ATLにおいてもアグレッシブATLで血漿中の濃度が高いことは知られていたが、その発現メカニズムや病変起源となる細胞レベルでの発現の差異については明らかではなかった。

今回の研究では、同一患者の臨床検体(リンパ節・末梢血)を用いた解析により、HGF発現ATL細胞は血液中よりもリンパ節内で多く占めていることが明らかになった。リンパ節ATL細胞株ではこのHGF/c-Metシグナルは活性化状態にあり、HGF発現のない血液由来細胞株にHGF遺伝子を導入すると、in vitroにおいてリンパ節由来細胞株と同様に下流シグナルの活性化が生じ、細胞増殖、浸潤が促進された。また、マウスxenograftモデルでは腫瘤形成を認めた。

HGF発現に関わるエピゲノムが標的のブロモドメイン阻害薬で細胞増殖抑制

リンパ節、血液由来ATL細胞株それぞれのHGF遺伝子の発現制御領域を解析すると、エンハンサー、プロモーターいずれの領域においてもリンパ節ATLでは活性化ヒストンマーカー(H3K27Ac)およびH3K27Acを認識し転写に関与するリーダータンパク質のBRD4が豊富だった。したがって、この違いが両者におけるHGF発現の違いを生み出していることがわかった。そこで、BRD4の阻害薬()であるJQ1を投与したところ、HGF発現の有意な低下、下流シグナルの不活性化が生じ、細胞増殖は抑制された。さらに、リンパ節由来ATL細胞株を移植したマウスxenograftモデルのJQ1治療では、対照群に比べ有意に腫瘤縮小が得られ、臓器浸潤が抑えられることがわかった。

臨床では血清HGF高値が予後不良と判明

また、臨床症例解析では、血清中HGF濃度は、ATL細胞が血液中にしか認められない症例に比べて、血液中以外にも有する症例では有意に高く、これらの病変を有しモガムリズマブ投与を受けた患者の予後解析では、血清HGF濃度が高いほど全生存期間、無増悪生存期間いずれも不良であることが明らかになった。以上のことから、HGF発現はモガムリズマブ治療奏効の予測マーカーとなる可能性が示され、治療抵抗性症例へのブロモドメイン阻害剤が新規治療薬として有用である可能性が見出された。

ブロモドメイン阻害薬は、現在海外において造血器腫瘍領域では白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫の治験薬として用いられはじめており、今後日本においても導入される可能性がある。研究グループは、「今回の研究により、ATLにおいてもブロモドメイン阻害薬の有用性が期待できることから、どのようなタイミングでどのように用いていくか治療法の開発を目標としている」と、述べている。

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