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肝がん、血管新生阻害剤の治療効果を血液検査で予測できる可能性-大阪市大

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2020年02月28日 AM11:45

ソラフェニブ治療を受けた肝がん患者、BTLA高値の場合はその後の生存期間が短い

大阪市立大学は2月25日、血管新生阻害剤ソラフェニブで治療を受けた肝がん患者の血液で免疫チェックポイント分子を測定した結果、BTLAという分子が高値の患者では、その後の生存期間が短いことを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科・肝胆膵病態内科学の榎本大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。

がん治療は着実に進歩を遂げており、その一例としてがん免疫療法の進歩が挙げられる。2018年のノーベル医学生理学賞を授与した京都大学の本庶佑名誉教授と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授は、免疫の司令塔であるTリンパ球表面にPD-1またはCTLA-4という分子を発見し、これをもとに免疫チェックポイント阻害剤が開発された。免疫チェックポイント阻害剤は悪性黒色腫、、リンパ腫、胃がんなどの一部のがんに使用されている。

日本で年間3万人近くが亡くなる肝がんにおいては、免疫チェックポイント阻害剤の効果が確認されておらず、がん細胞が増殖するために必要な血流を遮断する血管新生阻害剤が使用されている。将来的には血管新生阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤を併用することで相乗効果が得られる可能性があり、臨床試験が進行している。


画像はリリースより

肝がんへの血管新生阻害剤・免疫チェックポイント阻害剤併用、相乗効果に期待

今回、研究グループは、ソラフェニブで治療を受けた53名の肝がん患者の血液で、PD-1、CTLA-4など16種類の免疫チェックポイント分子を測定。その結果、BTLAという分子が高値の患者では、その後の生存期間が短いことがわかった。この結果は、肝がん患者のがん治療の効果が、血液検査で予測できる可能性を示している。

また、血管新生阻害剤での治療を始めて2週間目の血液で、11種類もの免疫チェックポイント分子の濃度が変化していることも明らかになった。血管新生阻害剤はがん免疫療法ではないが、非常に早期にがん微小環境の免疫状態に影響を与えていることがわかった。今後、肝がんに対する血管新生阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の承認に向け、その相乗効果が期待される。

免疫チェックポイント阻害剤は一部の患者に著効が得られる一方で、その効果が予測しにくいこと、重篤な副作用がみられる場合があること、薬価が高いことなどが問題になっている。同研究では、BTLAのバイオマーカーとしての有用性を示すことができたが、対象患者数を増やす、あるいは、進行度が初期の患者を対象とするなど、さらなる研究が必要だ。研究グループは、ソラフェニブ以外のさまざまな血管新生阻害剤で治療を受けた患者においても免疫分子の変化を解析し、より有効な薬剤併用の組み合わせの開発に役立てたいとしている。また、今回の研究成果を足がかりに、今後、より精度が高く治療効果を予測できるバイオマーカーの開発、治療効果予測のための検査法、有効な併用薬の開発に繋がるよう研究を進めていく、としている。

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