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HCVの持続感染で腸内フローラが変化、病状悪化で破綻進む-名古屋市大

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2018年05月07日 AM11:15

血液の循環経路から肝臓とつながりが深い「腸」

名古屋市立大学は5月1日、C型肝炎ウイルス()の持続感染が腸内フローラを変化させ、病状が悪化するにつれて腸内フローラの破綻(dysbiosis)が進むことを世界で初めて証明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の田中靖人教授、井上貴子講師らと、九州大学大学院農学研究院の中山二郎准教授、奈良県立医科大学、愛知医科大学との共同研究によるもの。研究成果は、米科学雑誌「Clinical Infectious Diseases」電子版で公開された。


画像はリリースより

近年、C型肝炎の治療は劇的に進歩し、今まで使用されてきたインターフェロンを使用せず、直接作用型抗ウイルス薬の組み合わせにより、ほぼ100%ウイルスを排除できるようになった。しかし、肝硬変に至った患者では、ウイルスを駆除しても傷つけられた肝臓を完全に修復することは困難である。腸は血液の循環経路から肝臓とつながりが深く、非代償性肝硬変の患者では高アンモニア血症の予防・治療のため、抗生剤を用いて腸内フローラの改善が試みられてきた。

腸内フローラ正常化が、肝がん予防につながる可能性

今回、研究グループは、健常者23名、病期の異なるC型肝炎患者166名(肝機能正常HCVキャリア()18名、84名、肝硬変40名、肝がん24名)の便検体・臨床情報を収集し、次世代シーケンサーを用いて腸内フローラの特徴を解析。その結果、PNALTでもすでに腸内フローラに変化が現われており、一時的にバクテロイデス属や腸内細菌科の細菌が増加していること、、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと病期が進むにつれて、腸内フローラを構成する菌種が減少(単純化)し、レンサ球菌属のストレプトコッカス・サリバリウスなどが腸管内に増加して、腸内フローラの破綻が見られることを証明した。また、腸管内で増加しているレンサ球菌属の細菌は、尿素を加水分解してアンモニアと二酸化炭素を作り出す酵素のウレアーゼ遺伝子を持っていることも判明。実際に、便の水素イオン指数(pH)を測定した結果、病期が進むにつれて便のpHが上昇し、アルカリ性に傾いていることが分かり、便中アンモニアの増加が予測された。

さらに、C型肝炎の病期の進行につれて腸内フローラが破綻し、腸管内で異常に増殖した細菌がアンモニアの増加を引き起こしている可能性も明らかとなった。腸管から吸収されたアンモニアが血液中に増加すると、・肝性脳症などの原因となることから、ストレプトコッカス・サリバリウスなどのアンモニア生産菌が病期の進行に関与している可能性も示唆された。

これまでにC型肝炎病初期(PNALTや慢性肝炎)の腸内フローラに関する報告はなく、また今回の研究のように腸内フローラの変化を病期別に解析した研究もなかった。今回の成果について、研究グループは、「ストレプトコッカス・サリバリウスなどのアンモニア生産菌を抑え込むことが高アンモニア血症・肝性脳症の予防や治療につながるとともに、より早期からの腸内フローラへの介入(プロバイオティクス摂取や投与、適切な抗生剤の投与、口腔ケアなど)が病期の進行・肝癌を抑える可能性が期待でき、新規の治療法の開発も期待できる」と述べている。

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