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ウイルス感染による糖尿病発症に関わる遺伝子を発見-九州大

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2015年04月13日 AM06:00

世界で初めて感受性遺伝子を発見、そのメカニズムを明らかに

九州大学は4月8日、同大大学院医学研究院保健学部門の永淵正法教授が、生体防御医学研究所、宮崎大学医学部、佐賀大学医学部、大分大学医学部、愛知県衛生研究所、シカゴ大学医学部等との共同研究で、ウイルス糖尿病感受性遺伝子を発見したと発表した。同研究成果は、国際学術雑誌「Nature Communications」に4月7日付で掲載されている。


画像はプレスリリースより

これまで、ウイルス感染によって糖尿病を発症する可能性はたびたび指摘されていたが、その証拠は乏しく、責任遺伝子も不明だった。

インターフェロン受容体関連シグナル伝達分子であるTyk2遺伝子欠損マウスは、EMC-Dウイルスが誘発する糖尿病に対して感受性である(糖尿病を高率に誘発され得る)ことから、今回研究グループは、ウイルス糖尿病感受性系統として知られているDBA、SJL、SWRのTyk2遺伝子変異を探索。その結果、DBAには遺伝子変異は認められず、SJLおよびSWRにのみ遺伝子変異が認められたという。

ワクチン開発に繋げる研究も実施

これらのTyk2遺伝子変異マウスにおいては、Tyk2遺伝子の発現が著しく低下。また、Tyk2遺伝子変異マウスの通常の細胞では、高濃度インターフェロン刺激によりウイルス抵抗性が回復したが、膵臓のランゲルハンス島β細胞では、その回復力が少ないことが判明。すなわち、EMC-Dウイルス誘発糖尿病に対する感受性は、Tyk2遺伝子変異により、インターフェロン刺激に対するランゲルハンス島β細胞が感染に弱くなってしまうことが原因であると考えられたという。

今回の研究結果により、ウイルス感染により感受性の高いヒトも、より高い危険度で糖尿病を発症したり、ウイルス感染が糖尿病の危険因子の1つとなりえることが証明された。今後は、 ウイルス糖尿病の病態の解明、糖尿病を起こしやすいウイルスの発見、さらには、ワクチン開発による予防にむけた研究が、着実に進展することが期待できると研究グループは述べている。

▼外部リンク
九州大学 プレスリリース

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