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東北大 新たな病原体の持続感染で動脈硬化が促進されることを発見

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2014年04月23日 AM06:00

ヘリコバクター・シネディの感染で

東北大学大学院医学系研究科の赤池孝章教授らは、新たにヘリコバクター・シネディ()という細菌の感染が血管細胞への脂肪蓄積を増加させ、動脈硬化症の進展を促進するというメカニズムを発見した。東北大学より4月15日に発表されたほか、英国学術誌「Scientific Reports」オンライン版で、その成果が掲載されている。


(画像はプレスリリースより)

動脈硬化の進展には、加齢や食習慣などさまざまな要因が関わっているが、近年、細菌やウイルスの持続的感染も要因のひとつとして注目されている。

しかし、どのような細菌やウイルスが、どのようなメカニズムで動脈硬化を促進させているのか、明らかになっていなかった。今回、赤池教授らはモデルマウスを用いた研究で、シネディ菌の感染が関与しているメカニズムを世界に先駆けて発見、動脈硬化が促進されることを証明したという。

血管への脂肪蓄積が増加、動脈硬化症の進展早まる

今回の研究によると、動脈硬化症のモデルマウスにおいてシネディ菌が感染すると、血管への脂肪の蓄積が増加、動脈硬化症の進展が早まることが確認されたそうだ。

さらに、培養したマクロファージ細胞を用いて実験したところ、シネディ菌が感染した細胞では、コレステロールを細胞内へと取り込むタンパク質が増加し、逆にコレステロールを細胞外へと排出するタンパク質は低下、その結果、脂肪の蓄積が増加することが判明したという。

これらから、シネディ菌の感染は、単球からマクロファージへの分化、およびコレステロール代謝タンパク質の発現変化を介したマクロファージの脂肪蓄積を誘導し、動脈硬化の発症と進展に関与していると考えられる。

さらなる研究推進を通じた予防・治療法の開発に期待

シネディ菌は、1984年に初めてヒトへの感染が明らかになった細菌。発熱や下痢などの比較的軽い症状を引き起こすことが知られているが、その感染経路や病原性については多くが不明なままとなってきた。赤池教授らは、このシネディ菌感染の高感度な検出・診断法を開発し、健常者にもこの菌の保菌者がいることをすでに確認している。

今回の研究成果は、動脈硬化の進展に関わる新しい病原体を発見し、またその分子機構を明らかにした点で意義深い。今後、ヒトにおけるシネディ菌の感染と動脈硬化症の関連について、さらなる詳細研究が進められることにより、ヒト動脈硬化症の新たな予防法および治療法の開発と確立につながることが期待できるとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク

東北大学 プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/

Promotion of atherosclerosis by Helicobacter cinaedi infection that involves macrophage-driven proinflammatory responses
http://www.nature.com/srep/2014/140415/

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