歯の喪失は高齢者死亡リスクを高めるが、歯科補綴物使用はリスク軽減につながる?
東京科学大学は6月12日、全国の65歳以上の高齢者約4.8万人を対象に、歯科補綴物(入れ歯、ブリッジ、インプラントなど)の使用状況と死亡リスクとの関連を調査した結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野の松山祐輔准教授および相田潤教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Prosthetic Dentistry」に掲載されている。

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これまでの研究から、歯の喪失が高齢者の死亡リスクを高めることは広く報告されてきた。しかし、入れ歯やブリッジなどの歯科補綴物の使用が、そのリスクを軽減するかどうかについては、十分に検証されていなかった。
高齢者約4.8万人対象、歯科補綴物の継続的な使用と死亡との関連を分析
今回の研究では、歯科補綴物の継続的な使用と死亡との関連を、大規模な疫学データを用いて明らかにすることを目的とした。同研究では、2013年、2016年、2019年に実施された「日本老年学的評価研究(JAGES)」の調査に参加した高齢者4万7,698人のデータを分析した。
歯科補綴物の継続的使用で生存割合高い傾向
歯科補綴物の使用状況だけでなく、追跡期間中に変化する歯の本数や健康状態などの背景要因も考慮した分析を行った結果、歯科補綴物を継続的に使用していた人は、使用していなかった人よりも平均で3.7ポイント生存割合が高いことがわかった。さらに、自身の歯の本数が少ない人(20本未満)ほど、歯科補綴物の効果がより顕著に見られた。
今回の研究は、歯科補綴物の継続的な使用が高齢者の寿命を延ばす可能性を示したものであり、高齢化が進む日本において、全身の健康や生活の質の向上における歯科医療の重要性を示唆している、と研究グループは述べている。
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・東京科学大学 プレスリリース