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不妊治療 体外受精した受精卵を診断し着床させる方法は倫理違反か?

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2012年07月12日 PM05:00
不妊治療患者が求めるより確実な方法

神戸市中央区の「大谷レディスクリニック」で、24種類全ての染色体を調べる着床前診断「aCGH法」を採用し、2011年2月から2012年5月の間で、この着床前診断を受けた夫婦129組のうち、16人が出産していたことが分かりました。

この方法は、着床前診断を行い、着床不全や流産の原因となる染色体異常のない受精卵を子宮に戻すので、より確実に妊娠・出産ができ、さらに転座による習慣流産のに悩む患者の場合、次回妊娠の流産率は劇的に低下するとされています。

(image by a4gpa’s photostream)

不妊症患者には「朗報」、しかし倫理違反の可能性も

しかし、日本産科婦人科学会では、着床前診断について、会告(指針)で、重い遺伝病などの患者を除いて実施を認めていません。

学会では、重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合や、重篤な遺伝性疾患に加え、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)の場合、医療機関からの申請を受けて審査し、認可した場合に実施可能ともしていますが、「大谷レディスクリニック」では、この申請を行っていませんでした。

大谷レディスクリニックの院長は、この着床診断について読売新聞の取材に答え、

「染色体異常のある受精卵は着床しにくく、着床しても流産に終わるのが現実。染色体異常の増える高齢の方にとっては画期的な技術だ。命の選別という批判もあるが、命を作るための技術であり、除外するためのものではない」

とし、申請を行わなかったことについては、申請から適応が下りるまで時間がかかるためとしています。

命に関わる問題なだけに、今後大きな議論を呼びそうです。

▼外部リンク

大谷レディスクリニック
http://www.ivf.co.jp/

社団法人 日本産科婦人科学会 「」に関する見解
http://www.jsog.or.jp/ethic/chakushouzen_20110226.html

読売新聞
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/

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