将来の糖尿病リスク高い妊娠糖尿病、国内の出産後OGTT実施状況は不明
横浜市立大学は10月28日、妊娠糖尿病を経験した女性に対する産後糖尿病スクリーニングの実施状況について、日本の大規模レセプトデータを用いて解析した結果を発表した。この研究は、同大医学部公衆衛生学の後藤温教授、公衆衛生学・産婦人科学の吉岡俊輝医師(博士課程3年)らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Open」に掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
妊娠中に血糖値が高くなる妊娠糖尿病は、妊娠の約7〜9%に見られる比較的頻度の高い病気。妊娠糖尿病の多くは出産後にいったん改善するが、その後の人生で2型糖尿病を発症するリスクが7〜10倍と非常に高くなることが知られている。実際に、出産後すぐの時点で、もしくは数年以内に糖尿病やその前段階の状態を発症する女性も少なくない。このことから、出産後早い時期に血糖値の検査を行い、リスクのある人を早期に発見して生活習慣改善や治療につなげることが重要である。このため、産婦人科診療ガイドライン「産科編2023」では、妊娠糖尿病であった女性に対して、産後6〜12週に75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)を行うことを推奨している。しかし、日本における出産後の75g OGTTの実施状況については、これまで十分に調べられていなかった。
妊娠糖尿病女性2,282人、2012〜2020年度の産後75g OGTT受検率を調査
今回、全国の健康保険組合のレセプトデータを用いて、妊娠糖尿病を経験した女性が出産後6〜12週の推奨期間に75g OGTTをどの程度受けているのかを調べた。対象は2012〜2020年度に出産した2,282人の女性とした。
推奨期間受検率は28.7%、増加傾向見られるが最高年度でも33.2%
研究の結果、産後6〜12週の推奨期間に検査を受けた人は28.7%にとどまった。また、2012年度から2020年度にかけてその割合は増加傾向にあったが、最も高かった2020年度においても、33.2%(181人/546人)にとどまった。
1年以内の受検率は65%、分娩と妊娠糖尿病の管理施設が違うと受検率低下
解析対象期間を産後4週から1年以内に拡大すると受検率は65%近くに高まったが、依然として3人に1人以上は検査を受けていなかった。さらに、分娩施設と妊娠糖尿病を管理した施設が異なる場合には、同じ施設で管理された場合に比べて受検率が低いこともわかった。
「在宅妊娠糖尿病患者指導管理料2」の算定率は13%、十分に活用されず
また、妊娠糖尿病既往女性の産後の血糖管理を推進するために2020年度から国が新たに導入した、「在宅妊娠糖尿病患者指導管理料2」という財政的インセンティブの算定率は13%と低く、制度がまだ十分に活用されていない実態も明らかになった。
産後の糖尿病予防体制の課題を示す
出産年齢が高齢化していくとともに、ますます産後の健康管理は重要となる。同研究は、日本における出産後の糖尿病予防体制の課題を示すとともに、政策立案や医療現場での改善に重要な示唆を与えるものである、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・横浜市立大学 プレスリリース


