IL-5ブロッカーのベンラリズマブ、血中好酸球数を指標とした効果予測は精度に課題
信州大学は7月9日、重症喘息治療薬である抗インターロイキン5受容体モノクローナル抗体(ベンラリズマブ)の有効性を予測する血中マイクロRNAマーカーとして、has-miR-7-5pを同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の平井啓太准教授(医学部附属病院薬剤部)、静岡県立総合病院の白井敏博副院長(呼吸器内科)、静岡県立大学薬学部の伊藤邦彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。

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気管支喘息は全世界で約3億人が罹患しており、そのうち5~10%は重症喘息患者と推定される。喘息の治療には吸入ステロイド薬が主に使用されているが、近年では特定のサイトカインを標的とした生物学的製剤が重症喘息治療薬として開発されてきた。一方、これらの生物学的製剤の有効性は患者によって異なることが報告されており、高い有効性が期待される患者を特定することは容易ではない。そのため、重症喘息治療薬である生物学的製剤の有効性予測マーカーの開発が求められている。ベンラリズマブは、好酸球の成熟や活性化を促すサイトカインであるインターロイキン5の作用をブロックすることで効果を発揮するため、血液中の好酸球数が有効性の指標となるとされているが、その予測精度には課題があった。
ベンラリズマブの有効性に関わる血中マイクロRNAを探索、has-miR-7-5pを同定
マイクロRNAは、生体内に存在する小さなRNA分子で、遺伝子から作られるタンパク質の量を調整する。マイクロRNAは細胞間の情報伝達にも関与しており、血液中に放出され安定して存在するため、血液を用いた測定が可能である。病気や病態によって異なる発現パターンを示すことが知られており、診断や治療法判定のバイオマーカーとして有用性が期待されている。そこで今回の研究では、重症喘息治療薬の有効性に関わる血液中マイクロRNAを探索した。
ベンラリズマブによる治療を受ける重症喘息患者を対象とした前向き観察研究を実施し、投与後24週において有効性の評価を行った。はじめに、投与前および投与後24週における血液中の免疫細胞であるT細胞を用い、投与により発現が変動した遺伝子転写産物を網羅的に解析した。さらに、それら遺伝子転写産物間の発現パターンの類似性を解析し、特定の遺伝子転写産物群が有効性に関連することを見出した。次に、投与前の血清を用い、マイクロRNAをPCRアレイにより定量し、有効群と非有効群で発現が異なるマイクロRNAを特定した。そして、遺伝子転写産物の解析結果と血清中マイクロRNA解析の結果を統合的に解析することで、有効性に関連するマイクロRNAのうち、有効性を反映する遺伝子転写産物と関連性の高いマイクロRNA(has-miR-7-5p)を同定した。
個々の患者に合わせた治療法の提供に役立つ可能性
今回の研究は、重症喘息治療薬であるベンラリズマブの有効性に関連する血中マイクロRNAマーカーhas-miR-7-5pを同定した。同研究成果は、重症喘息患者における治療の有効性を予測するバイオマーカーを提供し、個々の患者に合わせた治療法の提供に役立つ可能性がある。今回同定したマイクロRNAをより簡便に測定する方法を確立することにより、重症喘息患者の臨床診療に大きく貢献できると考えられる、と研究グループは述べている。
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・信州大学 プレスリリース


