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前立腺がん骨転移進展メカニズムの一端を解明、細胞外小胞が関与-東京医科大ほか

読了時間:約 2分31秒
2025年07月17日 AM09:20

悪性化した破骨細胞由来のEVsは、骨転移の進展にどんな役割を持っているのか?

東京医科大学は6月30日、悪性化破骨細胞由来の細胞外小胞を介した前立腺がん骨転移進展メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大医学総合研究所 未来医療研究センター 分子細胞治療研究部門の落谷孝広特任教授、田村貴明客員研究員(千葉大学)、吉岡祐亮講師と、千葉大学医学部附属病院泌尿器科の坂本信一診療教授、市川智彦前教授らの共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Extracellular Vesicles」に掲載されている。


画像はリリースより
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前立腺がんは、男性において最も罹患者数の多いがんである。比較的予後の見込めるがん腫として知られているが、一旦骨転移を引き起こすと予後不良であることが知られている。また、骨転移は骨を蝕んでいく過程で骨痛を引き起こし、病的骨折や高カルシウム血症をもたらして患者の生活の質を著しく損なうため、骨転移進展の抑制は臨床的に非常に重要だ。また、前立腺がんは造骨性骨転移という特異な転移様式を呈するにも関わらず、破骨細胞が担う溶骨性の変化も異常に活性化していることが臨床的にも非常に興味深い現象として知られていた。

細胞外小胞(Extracellular vesicles:EVs)はあらゆる細胞が分泌する脂質二重膜構造を有する微粒子である。EVsには、タンパク質やmRNA、マイクロRNAなどの機能性分子が含まれており、細胞間で受け渡されるメッセンジャーとしての役割を担っている。ヒトの生体内では、EVsを介して多くの生理現象が制御されており、EVsがさまざまな恒常性の維持に関与することが知られている。一方で、以前からがん細胞が分泌するEVsは転移先臓器の組織において、がん細胞の生存に有利な環境を作り出すことが知られており、EVsを標的とした治療用製剤の開発が盛んに行われている。

研究グループは今回、前立腺がんの骨転移巣において破骨細胞に何らかの性質の変化が起こっており、このがん細胞に教育された破骨細胞が分泌するEVsが腫瘍進展の鍵になっているとの仮説を立て、悪性化した破骨細胞由来のEVsが骨転移の進展にどんな役割を持っているのかを探索した。

前立腺がん細胞に教育された破骨細胞、IL-1βに関わる遺伝子の悪性形質を獲得

まず、骨転移モデルマウスの病理切片を観察すると、前立腺がん骨転移巣の腫瘍先進部位において、破骨細胞が異常に活性化していた。次に、In vitroの共培養系を用いて前立腺がん細胞の存在下で破骨細胞を培養したところ、この破骨細胞はIL-1βの関連遺伝子が上昇しており、破骨細胞の働きを抑える骨修飾薬に対して抵抗性をもつことを見出した。

この悪性化した破骨細胞由来のEVsの役割を探索するためにEVsの添加実験を行うと、破骨細胞活性は促進され、骨芽細胞活性は抑制された。EVsに含まれるマイクロRNAを網羅的に調べてみると、実際に破骨細胞の活性を促進するmiR-5112、骨芽細胞の活性を抑制するmiR-1963といったマイクロRNAが豊富に含まれていることが明らかになった。

骨芽細胞の活性を抑制するマイクロRNAの投与で腫瘍進展が加速、異常な骨破壊を確認

さらに、これらのマイクロRNAがIL-1βの関連遺伝子を標的として変化をもたらすことも見出した。加えて、これらのマイクロRNAを骨転移モデルマウスに投与すると腫瘍進展が加速し、異常な骨破壊が引き起こされた。

悪性化した破骨細胞や由来EVsを標的とした新規治療法の開発を目指す

今回の研究は、前立腺がん細胞の存在下における破骨細胞由来のEVsの役割を調べた世界初の研究と言える。同成果は、いまだ謎が多い前立腺がん骨転移の進展メカニズムの一端を明らかにし、新規治療法にもつながる可能性を示している。

「本研究は、EVsが関わる前立腺がん骨転移進展メカニズムの一端を示すことができた。今後は、これらの知見を活かし、悪性化した破骨細胞や由来EVsを標的とした新規治療法の開発を行う」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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