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インプリンティング疾患、母親に関する発症リスク因子を同定-成育医療センターほか

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2023年05月23日 AM11:18

インプリンティング疾患の発症と、母親の年齢・生殖補助医療それぞれの影響を検討

国立成育医療研究センターは5月18日、(assisted reproductive technology;ART)および、母親の年齢が、インプリンティング疾患にどのような影響を及ぼすのかを評価し、その結果を発表した。この研究は、同センター分子内分泌研究部の原香織研究員、鏡雅代室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Epigenetics」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

インプリンティング疾患とは、遺伝子の発現を制御するマーキングの異常によって引き起こされる希少疾患で、舌が大きい、巨体などの症状があるベックウィズ・ヴィーデマン症候群(新生児1万3,700人に1人の割合で発症)など8つの疾患がある。

生殖補助医療は、人工的な環境下で卵子や精子、受精卵を操作することから、遺伝子の発現を制御するマーキングの異常を引き起こし、インプリンティング疾患の発症頻度を高めると報告されてきた。しかし、これまでの評価では、(遺伝子発現のマーキングの異常)と片親性ダイソミー(一つの染色体が片親のみから受け継がれる染色体異常)のどちらを発症機序としたインプリンティング疾患なのか、また母親の年齢といった生殖補助医療における交絡因子による影響などは考慮されていなかった。

「母30歳以上での生殖補助医療」はエピ変異、「母高齢化」は片親性ダイソミーによるリスク因子

研究グループは、日本産科婦人科学会のデータベースを用いて、一般集団とインプリンティング疾患における生殖補助医療の頻度および、母親の年齢を比較した。その結果、「30歳以上の母親における生殖補助医療」は、エピ変異によるインプリンティング疾患発症のリスク因子になることがわかった。 また、「母親の高齢化」は、片親性ダイソミーによるインプリンティング疾患発症のリスク因子となることも明らかになった。

エピ変異は頻度「少」、生殖補助医療への過度な心配は必要ない

インプリンティング疾患は希少疾患であり、またその中でもエピ変異の頻度はさらに少ないことが知られている。研究では、30歳以上の女性に対する生殖補助医療は、エピ変異によるインプリンティング疾患のリスク因子となることが示したが、生殖補助医療によって引き起こされるその他のリスクに比して、特にインプリンティング疾患発症のリスクが高いとはいえない。

「研究で得られた知見は、生殖補助医療を検討する夫婦にとって有用な情報の一つに成り得ると考える。一方、インプリンティング疾患は希少疾患であり、新生児に対する発症頻度も低いため、研究成果により生殖補助医療を控えた方がいいなどの過度な心配は必要ないと考えられる」と、研究グループは述べている。

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